県警が呼びかけた「手入れ、見回りを」。空き家防犯が管理業の新しい仕事に
県警の呼びかけが示す、市場の変化
2026年9月、四国新聞の報道で、香川県内の空き家をねらった侵入窃盗が今年8月末で72件にのぼり、このままいくと年間100件を超えて過去最高になりそうだと伝えられました。
数字そのものも見過ごせませんが、事業者として注目したいのは、県警のコメントです。
防犯カメラでも警備会社でもなく、「手入れと見回りを」と呼びかけている点です。
これは、空き家管理という仕事のとらえ方が変わりつつあることを示しています。
これまで空き家管理は、通風や通水、雨漏り確認、草刈りといった、建物を傷ませないための仕事という色が濃いものでした。
そこに「防犯」という役割が公的な文脈で加わったことになります。
背景のひとつに、近年問題になっている、いわゆるトクリュウ(ざっくり言うと、SNSなどでゆるくつながり、犯行ごとに集まる匿名・流動型の犯罪グループ)の存在も指摘されています。
ただ、増加のすべてを一つの要因に結びつけるのは早計です。
ここでは断定を避け、「狙われにくい状態をつくる需要が高まっている」という事実の側を見ておきたいと思います。
「狙われにくい状態をつくる」という価値
侵入をたくらむ側が見ているのは、鍵が開いているかどうかだけではありません。
「この家に人の手が入っているか」というところまで見ている可能性があります。
草が伸び放題、郵便物がたまっている、雨戸が何か月も動いていない。
こうした状態は「長く誰も来ていない」というサインになり、入っても気づかれにくい家と見なされやすくなります。
つまり空き家管理は、住んでいるように偽装する仕事ではありません。
空き家であることを隠すのではなく、「誰にも見られていない空き家」にしない仕事です。
ここに、事業として提供できる価値があります。
具体的には、三つの領域に分けて整理できます。
外から見えるところ(草刈り、郵便物やチラシの回収)、建物そのもの(施錠確認、雨戸やガラスの点検)、そして人(定期訪問、近隣との連絡体制)。
この三つを継続的に維持することが、そのまま防犯サービスの中身になります。
ホームセキュリティとの関係
「それは警備会社と競合するのでは」という疑問が出てくるかもしれません。
ここは役割で分けて考えると整理しやすくなります。機械やセンサーによる警備は、異常が起きた瞬間を捉えることに強みがあります。
一方で、そもそも狙われにくい状態を日々つくるのは、人が足を運ぶ管理の領域です。
どちらが優れているという話ではなく、担う場面が違います。
立地や周辺環境によっては両方を組み合わせる提案も現実的で、既存の警備サービスと衝突せずに補える領域は少なくありません。
どの業種にチャンスがあるか
この変化は、空き家に接点を持つ幅広い業種に関わります。
定期巡回のノウハウを持つ警備業、現地作業に強い清掃業や造園業、所有者との接点を持つ不動産業や士業、そして高齢の親の入院や施設入所をきっかけに空き家が生まれる場面に立ち会う介護・福祉業。
いずれも、既存の顧客基盤や現場対応力を、防犯を軸にした空き家管理へと横展開できる可能性があります。
見落とされがちなのが、「まだ住める空き家」という市場です。
廃屋ではなく、転勤や入院で一時的に無人になった住宅は数多くあります。
こうした家は放置されると急速に狙われやすくなるため、住宅の見守りに近いサービスへの需要が今後広がっていくと考えられます。
事業者が押さえておきたい留意点
一点だけ、営業の場面で注意したいことがあります。
防犯効果を過度に断定しないことです。管理を続けても被害をゼロにできるわけではありません。
「狙われにくい状態をつくる」という価値は本物ですが、「これで絶対安全」という約束は、後々の信頼を損ないます。
県警の呼びかけという客観的な裏づけを添えつつ、効果と限界を正直に伝えることが、結果として長い信頼につながります。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。
















