防災型二地域居住とは。空き家を災害時の住まいに活かす新しい考え方

空き家を「余っている住宅ストック」として見直す

空き家というと、老朽化や倒壊、相続、防犯といった困りごととして語られがちです。

ただ、視点を少しずらすと別の姿も見えてきます。

全国のあちこちに、住宅という「箱」がすでに大量にある。使われていない住宅ストックが積み上がっている、という見方です。

一方で、都市部には別の課題があります。大きな災害が起きたとき、避難所のあとに必要になるのは、数週間から数か月、腰を落ち着けて暮らせる場所です。

ホテルや公営住宅、仮設住宅には限りがあり、いざというときの住まいが足りなくなる場面は起こりえます。

地方には使われていない家が余り、都市にはいざというときの住まいが足りない。このミスマッチをどう埋めるか。そこに、新しい事業の芽があります。

防災型二地域居住という切り口

二地域居住は、国としても後押しが進んでいる動きです。

ざっくりいうと、都市と地方の両方に生活の拠点を持つ暮らし方のことです。

多くは地方活性化や移住促進の文脈で語られますが、これを「防災=暮らしのバックアップ」という角度で捉え直すと、景色が変わります。

地方の空き家を、平時は二地域居住の家として使い、災害時にはしばらく暮らしを続けられる拠点として使う。

同じ一軒を、二つの顔で活かす発想です。

ここで正直に添えておくと、これはあくまで一つの仮説であり、制度として確立した仕組みではありません。

国の二地域居住促進も、主眼は地方活性化に置かれています。ただ、方向性としては現場感のある話だと考えています。

「暮らせる空き家」には条件がある

立地とインフラを見極める

「空き家ならどれでもいい」わけではありません。いざ暮らすとなれば、いくつかの条件が要ります。地震に耐えられる程度の丈夫さ、水害や土砂災害のリスクが低い立地、水道・電気が使えること、車でのアクセス、近くの医療や買い物環境、通信環境。このあたりが揃って、はじめて「暮らせる空き家」になります。

つまり、価値を持つのは空き家の「数」ではなく「質」のほうです。事業として関わるなら、まず押さえておきたい視点です。

平時から使われていること

もう一つ大事なのが、ふだんから人の手が入っているかどうかです。災害が起きてから、知らない土地の知らない家へ移るのは、現実にはハードルが高い。鍵の場所も、周辺の道も、近所付き合いも分からないからです。

逆に、月に数日でも通っていれば、その家は「いざというとき動ける家」になります。防災としての二地域居住は、災害時だけ使う家ではなく、平時から関係をつくっておく家だ、というところが肝になります。

「守る管理」から「暮らしをつなぐ管理」へ

ここに、事業者にとっての新しい論点があります。

二地域居住の家は毎日は住まないので、一年の大半は留守です。

留守のあいだ、家は静かに傷んでいきます。通風、通水、雨漏りの確認、庭木、郵便物、台風や豪雨のあとの点検。

こうした手入れを続けなければ、「いざというとき暮らせる状態」は保てません。

これまでの空き家管理は、家を傷ませない、近隣に迷惑をかけない、という守りが中心でした。

防災型二地域居住では、そこに「必要になったその日に、すぐ暮らせる状態を保つ」という役割が加わります。

家を守る仕事から、暮らしをつなぐ仕事へ。管理の意味が、一段広がる可能性があります。

どの業界に、どんな出番があるか

この広がりは、空き家管理を本業とする事業者だけの話ではありません。

不動産業なら、売買や賃貸に加えて「使いながら維持する」提案の幅が出てきます。

建設・リフォーム業には、耐震やインフラ更新といった「暮らせる質」を整える需要があります。

士業には、相続や利用契約、所有と利用の分離をめぐる相談が生まれるでしょう。

警備業や清掃業は、留守宅の点検・巡回・原状維持と相性がよく、介護・福祉の視点は「その家で本当に暮らせるか」を見立てる材料になります。

既存の事業に、空き家という接点を一つ足す。そんな組み合わせ方が現実的だと考えています。

いま準備しておけること

大がかりな仕組みづくりは、所有者だけでも、事業者だけでも、自治体だけでも難しく、それぞれの連携があって初めて動き出す話です。

とはいえ、事業者としていま始められることはあります。

自分の業務のなかで「留守宅の維持」や「暮らせる状態の判断」に関われる部分はどこか、一度棚卸ししてみる。地域にある空き家のうち、条件を満たしそうな家がどれくらいあるかを、ゆるく見立ててみる。

こうした小さな観察が、次の一手につながります。

空き家管理士協会は、空き家の可能性に挑戦します。

この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。

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