新耐震の空き家も税制優遇の対象へ?「平成の実家」が広げる空き家ビジネスの可能性
空き家ビジネスというと、古く傷んだ住宅を管理したり、解体・再生したりする仕事をイメージする人が多いかもしれません。
しかし、次の市場は少し違います。
これから増えてくるのは、平成に建てられ、外観も比較的きれいで、まだ十分使える可能性がある「新耐震の空き家」です。
国土交通省は2027年度税制改正に向け、相続空き家の売却に関する税制優遇を新耐震基準の住宅にも広げる方針を要望すると報じられています。
この動きは、空き家対策が「古い家を処分する」段階から、「まだ使える住宅を早く次につなぐ」段階へ移りつつあることを示しているのかもしれません。
空き家の3000万円特別控除とは
相続によって取得した実家などを売却する場合、一定の条件を満たすと、譲渡所得から最高3000万円を控除できる特例があります。
一般に「相続空き家の3000万円特別控除」と呼ばれる制度です。
現行制度では対象となる家屋について、
1981年5月31日以前に建築されたこと
などの条件があります。
つまり、これまで制度の中心に置かれてきたのは、いわゆる旧耐震基準時代の住宅でした。
現在の特例は2027年12月31日までの譲渡が対象で、一定の場合には、売却後に買主側が期限内に耐震改修や取り壊しを行うケースも対象となっています。
制度には相続時期、利用状況、売却金額など複数の要件があるため、実際の適用については税務署や税理士など専門家への確認が必要です。
国交省が「新耐震」の空き家まで対象拡大を要望へ
2026年8月26日の報道では、国土交通省が2027年度税制改正に向け、1981年6月以降に建築された新耐震基準の住宅についても、この特例の対象に加える方針とされています。
さらに、2027年末までとなっている制度について、4年間の延長も要望すると報じられています。
現時点では税制改正が決定したわけではありません。
しかし、空き家ビジネスに関わる事業者にとって注目すべきなのは、単なる「減税対象の拡大」ではなく、国の空き家政策が見る住宅の範囲そのものが広がっていることです。
「新耐震だから新しい」は、もう通用しない
新耐震基準が始まったのは1981年です。
1980年代後半から1990年代に建てられた住宅も、すでに築30~40年程度になっています。
例えば、
- 平成初期に親が建てた戸建て
- バブル期に開発された郊外住宅地
- ニュータウンの戸建て
- 子どもが独立して高齢者だけが暮らしている住宅
こうした住宅が、これから相続のタイミングを迎えていきます。
しかも、昔ながらの老朽空き家とは性格が違います。
外から見れば普通の住宅であり、点検や修繕を行えば、再び住宅として利用できるケースもあるでしょう。
この「まだ使える空き家」が、今後の空き家市場では重要な存在になっていくと思います。
空き家の発生原因の中心は「相続」
国土交通省の2024年の空き家所有者実態調査では、空き家を取得した経緯として「相続」が約6割を占めています。
つまり空き家問題は、特殊な不動産問題ではありません。
親が住んでいた普通の家を、子ども世代が引き継いだ結果として発生するケースが非常に多いのです。
ここに空き家ビジネスの大きな市場があります。
重要なのは、空き家になってから「売るか・壊すか」の二択を迫ることではありません。
管理しながら考える。
状態を調べる。
修繕して使う。
貸す。
売る。
次の所有者へつなぐ。
こうした複数の選択肢を整理できる人材が必要になります。
ビジネスチャンスは「売買の前」にある
不動産業
中古住宅として売却できる可能性の判断、査定、仲介、買取再販などの役割がより重要になります。
今までなら「古いから解体」と判断されていた住宅でも、状態によっては建物を残した流通が選択肢になる可能性があります。
建設・リフォーム業
全面改修だけではなく、
- 雨漏りや外壁の確認
- 給排水設備の確認
- 小規模修繕
- リフォーム
- 解体か再生かの判断材料づくり
といった仕事が生まれます。
士業
相続登記、遺産分割、税務、家族間での不動産の整理など、住宅が空き家になる前から関われる領域があります。
警備・介護などの異業種
親の施設入所や長期入院をきっかけに住宅が留守になるケースでは、空き家になる前の段階から見守りや管理の需要が生まれます。
空き家ビジネスは、不動産業だけの市場ではありません。
これからの勝ち筋は「管理→診断→出口」の導線
今後、空き家ビジネスで重要になるのは、一つのサービスだけを売ることではないと考えています。
例えば、
相談
↓
現地確認
↓
空き家管理
↓
建物状態の把握
↓
専門家との連携
↓
売却・賃貸・活用・修繕・解体
という流れです。
所有者は最初から「売却したい」と決めているとは限りません。
むしろ、
「親の家をどうしたらいいか分からない」
という段階から相談が始まることが多いでしょう。
だからこそ、最初の相談窓口となり、必要な専門家やサービスにつなぐ役割に価値があります。
ここは、地域密着型の事業者が空き家市場へ参入するうえでも大きなポイントです。
「空き家管理」は出口までの時間を守る仕事になる
新耐震の住宅であっても、誰も住まない状態が長く続けば傷みます。
換気されない。
水を使わない。
庭木や雑草が伸びる。
郵便物がたまる。
雨漏りや設備の異常に気づかない。
こうした小さな問題が積み重なることで、本来は売ったり貸したりできた住宅の選択肢が狭くなってしまう可能性があります。
そこで重要になるのが空き家管理です。
管理そのものが最終目的なのではありません。
所有者が将来の方針を決めるまで、住宅の選択肢をできるだけ残しておく。
これが、これからの空き家管理の大きな役割になるでしょう。
空き家ビジネスは「処分」から「住宅をつなぐ仕事」へ
今回報じられた税制改正要望は、まだ制度化が決まったものではありません。
今後の税制改正の議論を確認する必要があります。
それでも、政策の方向を見ることには意味があります。
これまで空き家対策の中心だった旧耐震住宅に加え、新耐震住宅まで視野に入ってくれば、空き家市場そのものの裾野が広がります。
そして求められる仕事も、
「古い空き家をどう処理するか」から、
「まだ使える住宅をどう次につなぐか」へ。
少しずつ変化していくでしょう。
空き家管理士協会では、空き家管理の知識だけではなく、所有者への対応、建物確認、関連事業者との連携など、地域で空き家問題に対応するための知識とネットワークづくりを進めています。
不動産、建設、士業、警備、介護など、すでに地域との接点を持つ事業者にとって、空き家は既存事業の延長線上から参入できる可能性のある市場です。
これから増える「平成の実家」を誰が支えるのか。
そこに、次の空き家ビジネスのヒントがあります。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。
















