空き家の「掘り起こし」はなぜ難しいのか.福岡・全国初の官民連携から読む
福岡で始まった、全国初の官民連携
福岡県で「空き家再生子育て応援事業」という取り組みの協定が結ばれました。
放置された空き家を民間が買い取り、子育て世帯が暮らしやすい住宅にリフォームして、手頃な価格で販売する。
増えすぎた空き家と、家を持ちにくい若い世帯。この2つの困りごとを一度に解こうという発想です。
県はこれを「全国初」と位置づけています。
ここでいう買取再販とは、中古住宅を事業者が自ら買い取り、価値を高めて販売する事業のことです。
今回はその買取再販の事業者10社が、県・市町村とともに協定に加わりました。
三者が得意を持ち寄る仕組み
役割分担がはっきりしています。
県は事業全体の統括と、相続などの手続き費用を支える財源の確保を担います。
市町村は地元の空き家を掘り起こし、所有者に事業への参加を呼びかけます。
そして民間事業者が、買い取り・リフォーム・販売という実務を引き受けます。
事業のエリアは飯塚市、柳川市、遠賀町、築上町の4市町から。今年の秋以降、順次リフォームと販売が進み、再生する空き家は全体で70戸が予定されています。
行政の設計としては、かなり実務的でよくできた枠組みだと思います。
いちばんの難所は「掘り起こし」にある
ただ、こうした事業がうまく回るかどうかは、買取やリフォームの前段階で決まる面が大きいと感じています。
つまり、所有者が「売ってもいい」と判断してくれるかどうか。
この掘り起こしが、事業全体のいちばん細い管になります。ここが動かなければ、そもそも買い取る対象が出てきません。
そして、この掘り起こしがもっとも骨の折れるところです。
所有者は「売りたくない」のではなく「決められない」
空き家の所有者の多くは、売却を拒んでいるわけではありません。
多くの場合、「まだ決められない」だけです。
相続した実家に仏壇や思い出があり、近所への気兼ねもある。
相続登記、つまり名義の書き換えが済んでおらず、親族間の話し合いも進んでいない。こうした事情が重なって、判断が止まってしまう。
これは責められる話ではありません。
誰にとっても、親の家をすぐ手放す決心は簡単ではないはずです。
だからこそ、「早く売りましょう」という正論だけでは、人はなかなか動けません。
「売れる状態にするまで」に生まれる出番
ここに、周辺業種の事業機会があると考えています。
行政や買取事業者が掘り起こしに苦労しているということは、その手前を支える担い手が足りていない、ということでもあります。
相続関係を整理する士業。残された家財を片づける清掃・不用品回収の事業者。
迷っている所有者の話を聞き、次の一歩に寄り添う相談の担い手。
こうした「売れる状態にするまで」の仕事は、今回の10社の枠には含まれていません。
ですが、事業が進むほど必要とされる部分です。参加した10社は、全国規模の企業から地元の工務店まで幅広い顔ぶれです。
その主役の周りには、掘り起こしを支えたり、リフォームの一工程を担ったりする席が、まだ多く空いていると見ています。
「全国初」は他地域への前触れでもある
全国初という点も見逃せません。
福岡でうまくいけば、同じ枠組みを検討する自治体が他にも出てくる可能性があります。
今回の動きは、九州以外の事業者にとっても無関係ではありません。
自分の地域で似た座組みが立ち上がったとき、仕組みを先に理解している人ほど動きやすくなります。
今回の取り組みは、放置されていた家に再び光を当てようとするものです。
その光の当て方に、さまざまな業種の出番が隠れています。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。
















