空き家窓口の落とし穴。「誰に仕事を回すか」問題を考える
「任せれば安心」とはならない
商工会・商工会議所が空家等管理活用支援法人の担い手に加わる方向が、国の方針案で示されています。
地域の事業者が幅広くそろう商工会には、空き家対策を束ねる素質があります。
ただ、担い手として実際に機能させるには、いくつかの課題を越える必要があります。
ここでは大きく三つに整理します。なお、担い手拡大は2025年11月時点で方針案の段階であり、確定した制度ではありません。
課題① 空き家の専門知識の不足
商工会の職員は、経営支援の専門家です。補助金、融資、創業支援といった領域には強みがあります。
一方で、建物管理、空家法の運用、相続や建築の判断といった空き家固有の領域は、専門が異なります。
所有者からの相談に対し、他の事業者を紹介するだけで終わってしまうと、支援法人としての機能は限定的になりがちです。窓口の設置だけでなく、空き家の専門人材と連携できる体制があるかどうかが、実効性を左右すると考えられます。
課題② 業務負担の増加
商工会・商工会議所の現場は、補助金、融資、創業支援、事業承継、税務相談など、すでに多くの業務を抱えています。
そこへ空き家相談を加える場合、相談対応の人員、予算、相談から専門家へつなぐ手順、専門家ネットワークの整備までをセットで設計する必要があります。窓口機能だけを付加しても、運用が回らなくなる懸念があります。
課題③ 誰に仕事を配分するのか
三つめが、参入を検討する事業者にとって最も重要な論点です。
商工会が空き家の窓口となり、所有者から管理や草刈りの相談が入ったとき、その仕事をどの会員事業者に回すのか。会員のなかには同業が複数あり、配分の基準が不透明だと、特定事業者への偏りや、それに伴う不信が生じやすくなります。古参事業者に固定され、新規参入者に機会が回らない構図は、避けたいところです。
参入を検討する事業者が確認すべきは、「その地域の空き家関連業務が、どのようなルールで配分されるのか」という一点です。特定事業者に固定されるのか、登録すれば新規でも候補に入れるのか。ここが、参入後に機会を得られるかどうかを大きく左右します。
商工会は「選ぶ人」ではなく「並べる人」に
この配分問題への一つの考え方は、商工会自身が発注先を選ばない仕組みにすることです。
商工会が特定の一社を選べば、その判断の責任を商工会が負い、公平性への疑問も生じます。
そこで、業種別に事業者を登録しておき、相談が入ったら該当業種から複数社を所有者に提示する。最終的な選択は所有者が行う。こうすれば「なぜその会社か」という問いに対し、選んだのは所有者だと説明できます。
所有者が各社のHPやSNSを見て選ぶ形も、透明性を保ちやすい方法です。登録さえすれば後発でも候補に入れる設計であれば、公平性も担保されます。具体的な運用要件は自治体や制度設計の段階で定まるため、地域ごとの確認が必要です。
競合ではなく、役割分担で考える
商工会が唯一の担い手だという話ではありません。
NPOには住民に寄り添う力、不動産・買取会社には流通や再生の力、管理事業者には現場対応の力、士業には相続・登記・法務の力があります。商工会の持ち味は、それらを束ねる点にあります。
問うべきは「誰が支援法人になるべきか」ではなく、「この地域で、どの機能をどう組み合わせるか」です。主役が地域によって異なるのは自然なことで、商工会はその有力な候補の一つと位置づけるのが現実的だと考えています。
こうした束ね役が機能すれば、空き家対策は「困ったものの処理」から一歩進みます。
管理、修繕、創業、二地域居住、観光、福祉、地域雇用まで含めて考えられるようになり、空き家は地域に産業をつくる入口にもなり得ます。放置されず、地域のニーズに合った使われ方をすれば、空き家は地域の資産に変わります。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。
















