「空き地問題」に変わる前に。跡地活用という新しい仕事
解体して終わり、では問題は片づかない
空き家を一軒解体すると、危険な建物がなくなって、ひとまず安心ですよね。
けど、その先で草が伸び、誰も刈らず、粗大ごみが放り込まれ、所有者は遠方に住んでいて見に来られない。
気づけば、誰も使わない土地だけが残ります。
これは、空き家問題が空き地問題に姿を変えただけの状態です。
建物がなくなった分、かえって手がかりが減り、対処しづらくなることもあります。
空き家を仕分けして壊す判断が進むほど、こうした空いた土地は増えていきます。
壊したあとをどうするかが抜け落ちていると、街には隙間だけが増えていきます。
「歯抜けの街」は、埋め直すより前提にする
軒が連なっていた通りが、やがて家と空き地が交互に並ぶ形になり、空き地のほうが多い区画も現れる。
都市計画の分野では、密度が下がっていくこうした状態を「都市のスポンジ化」と呼びます。
ざっくりいうと、人口は減るのに街の面積は変わらず、中身がスカスカになっていく現象のことです。
人がこれだけ減っていく以上、抜けた区画をすべてもとどおり住宅で埋め直すのは現実的ではありません。
そこで発想を変えて、「空いた土地があることを前提に街をつくり直す」という考え方が必要になってきます。
世界の縮小都市が選んだ、3つの道
旧東ドイツのライプツィヒは、危険な建物を計画的に壊したあと、跡地を無理に住宅へ戻さず、まず緑地にしました。
これ「暫定利用」という考え方で、今は緑にしておき、需要が戻れば開発し、戻らなければそのまま残す。決めつけない使い方です。
アメリカのデトロイトは、空いた土地を隣の家に組み込みました。
市の土地バンクが、隣接する住人にかぎってごく安い名目価格で売り、庭や駐車場として使ってもらう。土地単独で活用するのではなく、隣の敷地とまとめて価値を上げる発想です。
フィラデルフィアは、さらにシンプルでした。
ごみを片づけ、土地をならし、芝を張り、簡単な柵をつける。それだけです。荒れた土地がきれいになるだけで、景観や防犯、周辺住民の安心につながる。
ある研究では、手を入れた土地の周りで治安や住民の気持ちにいい変化があったという報告も出ているそうです。活用は、必ずしも収益とセットではないという割り切りです。
日本にも、すでに答えの芽がある
有名なのは山形県鶴岡市の「ランドバンク」です。
狭い道路や変形地、空き地、隣の宅地をまとめて整理し、小さな区画を組み替えて住みやすい形に編み直す取り組みです。
宅建士や司法書士、建築士が集まったNPOが担っています。
神戸市の「まちなか防災空地」(現在は「まちなか活用空地」)は、空き家を壊した土地を、ふだんは広場、災害時は避難や消火活動の場として使います。
所有者は土地を手放さず、市などが無償で借り受け、そのあいだ税の負担も軽くなる仕組みとされています。
千葉県柏市の「カシニワ」は、持てあました土地を地域の団体につなぎ、花壇や遊び場として使ってもらう取り組みです。
この3つに共通するのは、「所有する人」と「使う人」をいったん切り離している点です。
持ち主が自分で使えなくても、使いたい誰かにつなげばいい。当たり前のようで、日本ではなかなか進んでこなかった発想です。
「空き土地トリアージ」と、事業者の新しい仕事
空き家を、残す・活用する・当面は管理する・壊す、と仕分けるのと同じように、土地にも行き先の候補があります。
市場に戻す、隣とまとめる、地域で使う、防災や雨水対策のインフラにする、緑にもどす、今は決めず将来に残す。
これだけ出口があるなら、土地も仕分けたほうがいい。
これを「空き土地トリアージ」と呼んでみたいと考えています。
こう考えると、空き家に関わる事業者の仕事は「家」から「土地」へ広がります。
相談を受け、残すか壊すかを一緒に考え、管理し、解体を見届け、跡地を管理し、隣との調整を手伝い、地域で使いたい人につなぐ。
解体補助についても、「壊して終わり」ではなく「解体と数年間の跡地管理をセットにする」という設計があり得ます。
跡地の出口をつくる仕事には、不動産、建設、士業、解体、造園、清掃、警備と、さまざまな専門家の手が必要です。
空き家に関わる事業者であれば、どこかで必ず接点が出てくる領域だと思います。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。
















