介護には担当者がいる。でも、家にはいない。介護と住宅管理のすき間に生まれる新しい仕事
介護が始まると、家族は家のことまで手が回らない
高齢の親が転倒して入院し、リハビリを経て施設に入る。
こうした流れは決して珍しいものではありません。
そのあいだ家族は、病院との面談、介護保険の手続き、施設探しなどに追われます。
離れて暮らす家族なら、仕事を調整しながら何度も往復することになります。
その間、親が暮らしていた家では、郵便物がたまり、庭木が伸び、雨漏りがあっても気づかれないまま時間が過ぎていきます。
家族の関心が介護に集中するのは当然のことで、家の管理が後回しになるのは誰のせいでもありません。
介護には担当者がいる。でも、家にはいない
ケアマネジャーの役割と、その外側にあるもの
ケアマネジャーは本人や家族の希望を聞いて介護サービスの組み合わせを一緒に考える専門職です。
介護が始まった家族にとって、なくてはならない存在といえます。
一方で、持ち家の維持管理は、介護の仕組みの守備範囲の外にあるのが基本とされています。
介護制度が不十分というより、制度の性格上そうなっているということです。
その結果、介護と住宅管理のちょうど間に、誰も担当していない領域が生まれています。
200人調査が示す実態
協会では2026年夏、施設に入っている方の自宅管理について200人にWebアンケートを実施しました。
家の管理について「誰も対応していない」との回答が34.5%、管理の担い手として「同居していない家族」を挙げた方が58.5%でした。
離れて暮らす家族が無理をして抱えているか、誰も手が回っていないか。そのどちらかになりやすい構造が見えてきます。
「早めに売るか貸すか」が決まらない理由
家は使わないと傷み、固定資産税や管理の手間もかかり続けます。
そのため「早めに方針を決めましょう」というアドバイスは、不動産の実務ではごく一般的なものです。
ただ、実際の家族はなかなか決められません。
リハビリが進めば家に戻れるかもしれない。
本人が家を手放したくないと思っているかもしれない。
きょうだいの意見がまとまらないこともあります。
親が施設に入った直後に家の話を切り出すこと自体、心理的な負担が大きいものです。
事業者として押さえておきたいのは、この「決められない期間」にこそ、家を良い状態に保つ支援が必要だという点です。
空き家そのものが問題なのではなく、放置されることが問題になります。
家の管理は「二つのタイミング」で考える
要介護認定のとき
要介護認定は、介護保険のサービスを使うために、どのくらい介護が必要かを判定してもらう手続きです。
この段階では本人はまだ自宅で暮らしていることが多いものの、草刈りがつらい、屋根や雨どいの異常に気づけない、二階の様子がわからないといった形で、住宅管理の難しさはすでに始まっています。
このタイミングで大切なのは、作業そのものより「決めておくこと」です。
家が空いたら誰が判断するのか、鍵は誰が持つのか、費用はどこから出すのか。
本人の判断能力が低下すると、管理の契約や修繕の判断に成年後見などの手続きが必要になる場合があり、時間がかかることが少なくありません。
施設入所・長期入院のとき
家が実際に空くタイミングです。
持ち主が戻る可能性を残したまま家を守る、いわゆる留守宅管理が必要になります。定期的な見回り、通風、郵便物の確認、雨漏りや庭木の点検などが中心です。
事業者にとっての意味
家族と一緒に「決めておくこと」を確認し、その後の管理まで見通せる担い手は、まだ多くありません。
不動産業なら将来の売却や賃貸の相談、士業なら財産管理や後見の相談、リフォーム業なら在宅期の住宅改修、介護・福祉事業者なら日々の支援の中での気づきと、それぞれの業種に関われる余地があります。
介護の入口は、家の管理の入口でもある。この視点を持つことが、新しい顧客接点につながります。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。

















