譲渡型賃貸はどこでも成立するのか?参入前に見極めたい「向く街・向かない街」
譲渡型賃貸とは、どんな仕組みか
譲渡型賃貸住宅は、一定期間を賃貸として住み続けたのち、住宅の所有権を入居者へ移す仕組みです。
RTO(レント・トゥ・オウン=借りて、自分のものにする)とも呼ばれます。
実務のうえでは、長期の定期借家契約と譲渡の予約契約をセットで結び、所有権移転の仮登記を打っておく形が一般的とされています。
入居者にとっては、住宅ローンを組まずに持ち家を目指せる点、実際に住みながら建物と地域を確かめられる点が評価されています。
事業者・所有者にとっては、売れにくい住宅を長期の家賃収入に変えられ、出口(最後は入居者へ譲渡)まで見通せる点が利点です。
静岡県で月6.5万円で7年、徳島県で約16年といった形で、実際に動き出している事例も出てきています。
成立しやすいのは「都会でも過疎地でもない街」
参入を考えるうえで最初の分かれ目が、立地です。
可能性が高いのは、人口5万〜30万人程度の地方都市や大都市近郊の郊外だと、ぼくは考えています。
理由は生活機能です。
病院、学校、スーパー、一定の雇用がそろっていれば、移住者や子育て世帯の候補地になります。
「家がもらえるから」だけでなく「ここで暮らせるから」住んでもらえる。
この違いが、長期入居の前提を支えます。
加えて、この規模の街には築20〜40年の中古戸建てが多く、売却に時間がかかって滞留している物件を取得しやすい傾向があります。
大都市中心部では、通常の賃貸・売却でも十分な需要があり、無償譲渡を前提にする理由が乏しくなります。
土地価格も高く、家賃だけで取得費を回収しにくい。
逆に極端な過疎地では、「家がもらえる」ことが移住の決め手になりにくく、仕事・教育・医療・交通の不足が途中退去につながりやすいと考えられます。
条件を満たしているのに危ない街がある
ここが実務でいちばん注意したいところです。
人口も家賃相場も条件を満たしているのに、手を出すと苦しくなる街があります。
譲渡型賃貸は10年、15年という長い時間を前提にした事業です。
今の数字がよくても、その前提が将来崩れれば話が変わります。
たとえば、人口規模は基準内でも中身が減り続けている街では、10年後に入居需要そのものが薄くなる恐れがあります。
中心都市までの距離は近くても移動が車一択の街は、若い世帯に響きにくい。
空き家が相場より安い街は、浸水想定区域や古い造成地といった安さの理由を抱えていることがあります。
採算は「儲けの額」より「器に収まるか」で見る
採算をひとつの例で置いてみます。
月8万円で10年なら、家賃総額は960万円です。
ここから物件取得費、リフォーム費、10年分の固定資産税や火災保険、募集・契約費、修繕、資金調達コストなどを差し引くと、総事業費は800万円台になり、手元に残るのは百万円程度、という水準になりがちです。
空室や途中退去、大規模修繕が発生すれば、その利益は簡単に消えます。
数字は物件ごとにまるで異なるため、「月8万円なら儲かる」という結論ではダメです。
家賃という器の中に、仕入れ・改修・維持・リスク対応まで収まる物件かどうか。この見方のほうが実務的です。
なお、譲渡の際は渡し方によって税務上の扱いが変わる可能性があります。ここは税理士など専門家と個別に詰める領域です。
空き家管理業との相性
譲渡型賃貸は、単なる空き家活用というより、10年間にわたって住宅の状態を維持する長期の住宅管理事業として設計する必要があります。
いきなり譲渡型にするのではなく、まず建物を診断し、一定期間管理して雨漏りや給排水、近隣環境を確認する。
その管理履歴を入居希望者に開示し、入居後も定期点検を続ける。
この一連の流れは、空き家管理業の実務とそのまま重なります。
参入を考える事業者にとって、管理を入り口にする設計は現実的な選択肢になると考えています。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。
















