実家じまいが進まない地方で、事業者に何ができるのか
都市の空き家と地方の空き家は、問題の種類が違う
空き家問題はひとくくりに語られがちですが、都市と地方では性質がかなり異なります。
都市部では、交通の便がよく土地にも一定の需要があるため、「空き家なのに市場に出ていない」ことが課題になりやすい。
つまり、どう市場に流通させるかが論点の中心になります。
一方、地方はそもそも空き家の市場が動きにくい。
売りに出しても買う人がおらず、家賃を下げても借り手が現れない。
古い家だと修繕費もかさみます。
所有者が動こうとしても、市場そのものが応えてくれないのです。
事業として空き家に関わるなら、この違いを踏まえておく必要があります。
都市型の「流通支援」の発想だけでは、地方の現場に届かない場面があります。
「実家じまい」には、決めるまでの時間がある
実家じまいという言葉には、「片づけて、売って、終わり」という響きがあります。
ただ実際には、売りに出して1年、2年、場合によっては5年以上かかることもあります。
理由はさまざまです。
相続人どうしの話し合いに時間がかかる。解体には費用がいる。
土地だけにすると固定資産税の扱いも変わります。
こうした事情が重なり、「決めるまでの時間」がどうしても発生します。
この期間、家は空き家のまま残ります。そして時間の経過とともに、草が伸び、雨漏りが起き、郵便物がたまり、設備の盗難といった被害が生じることもあります。
放置が進むほど、売却価格は下がり、修繕費は増え、選べる選択肢が減っていきます。
「出口」に偏りがちな空き家対策
現在の空き家対策は、売却・移住・空き家バンク・解体・活用…といった「出口」に焦点が当たりがちです。
どれも重要な取り組みですが、地方には、その出口がなかなか決まらない家が数多くあります。
売却が成立するまで。相続整理が終わるまで。親が施設にいるあいだ。活用先が見つかるまで。
こうした「あいだ」の期間を支える仕組みは、これまであまり注目されてきませんでした。
ぼくは、出口を用意する政策と同じくらい、「出口が決まるまでの時間」を支える仕組みが地方には必要だと考えています。
そして、ここに事業としての余地があります。
「あいだ」を支える仕事は、既存事業の延長にある
「あいだを支える」と言うとなんか難しく聞こえますが、中身は身近な作業です。
定期的に家を見にいく。草を刈る。雨漏りや設備の状態を確認する。郵便物を片づける。防犯上のリスクに目を配る。
こうした業務は、すでに地域で事業を営む会社が、本業の延長で担える領域と重なります。
造園業や清掃業、警備業、地元の工務店。親が施設に入った家であれば、介護・福祉の現場からつなぐ動きも考えられます。
巡回ルートや地域の信頼をすでに持っている事業者にとっては、大きな設備投資をせずに始められる可能性があります。
都市部のように物件が短期間で売買され手数料が生まれる世界ではないため、大手が積極的に参入しにくい。だからこそ、地域に根ざした事業者に余地が残されている、という見方もできます。
空き家管理を、どう自社に組み込むか
空き家管理を新しい柱として一から立ち上げる方法もあれば、既存サービスの付帯メニューとして取り入れる方法もあります。どちらが向くかは、いまの事業内容や地域の状況によって変わります。
大切なのは、空き家を「困りごと」としてだけでなく、地域の中で回していく資源として捉え直すことだと思っています。管理された家には、売却・賃貸・再利用・解体といった選択肢が残ります。その選択肢を守る役割を担えるなら、所有者の安心にもつながり、地域の仕事にもなります。空き家管理士協会では、こうした担い手を全国に広げる取り組みを続けています。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。
















