空き家管理ビジネスの入口は「草刈り」にある。異業種参入の可能性を考える
お盆に久しぶりに実家へ帰り、伸び放題になった草を見て「何とかしなければ」と感じる。全国で繰り返されている光景です。
しかし空き家ビジネスの視点から見ると、ここには単なる「草刈り仕事」とは違う市場が見えてきます。
重要なのは、庭を全部きれいにすることではありません。
道路、隣地との境界、玄関、建物周辺など、問題につながりやすい場所を確認し、次に訪れるまで適切な状態を維持することです。
つまり、求められているのは作業ではなく「継続管理」。
ここに、異業種が空き家ビジネスへ参入するヒントがあります。
空き家900万戸時代、「売る・貸す」だけが空き家ビジネスではない
2023年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%となりました。
また、賃貸用・売却用・二次的住宅を除く空き家は約385万戸です。
もちろん、この数字すべてが空き家管理サービスの市場になるわけではありませんが、「すぐには売らない・貸さない住宅」が相当数存在していることは、管理ビジネスを考えるうえで重要です。
これまで空き家ビジネスというと、
「売却する」
「賃貸する」
「リフォームして活用する」
といった出口側のビジネスが注目されてきました。
しかし、その前には必ず、
「まだ処分を決められない期間」
があります。
相続したばかりの実家、親が施設へ入所して空いた住宅、将来使う可能性を残している住宅などです。
この期間に必要になるのが「管理」です。
草刈りは空き家管理で最も分かりやすい困りごとの一つ
元となった記事では、お盆に帰省した際、庭全体を無理に刈るのではなく、まず家の周囲を一周して、
- 道路への草のはみ出し
- 隣地への越境
- 玄関までの通路
- 室外機や給湯器周辺
- 基礎や外壁周辺
などを確認することを提案しました。
これはそのまま、空き家管理サービスの商品設計にも応用できます。
所有者が本当に欲しいのは「草を何平方メートル刈ってもらったか」だけではありません。
「近所に迷惑をかけていないか」
「家に異常がないか」
「次に来るまで大丈夫か」
という安心です。
ここをサービスとして提供できれば、単なる草刈り代行とは違う価値が生まれます。
「草刈り単発」から「定期管理」へつなげる
草刈りだけを商品にすると価格比較されやすい
草刈りだけを切り取れば、利用者から見える違いは「いくらで刈ってくれるか」になりやすくなります。
そこで空き家管理では、
草刈り+点検+写真報告
という考え方が重要になります。
たとえば草刈りに訪れた際に、
「雨樋が外れています」
「給湯器周辺に異常があります」
「郵便物がたまっています」
「庭木が隣地へ越境し始めています」
といった変化を確認し、所有者へ報告する。
すると草刈りが、住宅全体を見守る接点になります。
定期訪問から周辺サービスが生まれる
定期的に現場を見ることで、
草刈り
→防草シート
→庭木剪定
→小修繕
→雨漏り確認
→防犯対策
→売却・活用相談
というサービスの広がりも考えられます。
すべてを自社で行う必要はありません。
造園、建設、不動産、警備、士業など地域事業者と連携することで、一つの空き家から複数の専門サービスへつなぐことも可能です。
これが空き家ビジネスに異業種が参入しやすい理由の一つです。
空家法改正で「管理」の重要性はさらに高まっている
2023年12月に施行された改正空家法では、「管理不全空家」という考え方が導入されました。
放置が続けば特定空家になるおそれがある住宅についても、市区町村が指導等を行える仕組みです。
国土交通省が2025年12月に公表した集計では、2025年3月31日までに管理不全空家等への指導が3,211件、勧告が378件行われています。
つまり今後の空き家対策では、
「悪くなってから解決する」だけではなく、「悪くなる前に管理する」
ことが、より重要になっていくと考えられます。
これは空き家管理事業者にとって大きなポイントです。
空き家管理ビジネスの勝ち筋は「作業量」ではなく「管理設計」
空き家管理で「庭全部を毎回きれいにする」ことだけを考えると、作業時間も人件費も増えます。
特に夏の屋外作業では熱中症対策も重要です。厚生労働省も暑熱環境での作業について、リスクを把握・評価し、対策を講じることを求めています。
だからこそ、
「毎回全部やる」
ではなく、
「今回はどこまでやるべきかを判断する」
サービスに変える。
道路沿いは毎月確認する。
庭の奥は必要な時期だけ。
夏場の大規模な除草は時期をずらす。
防草シートで将来の作業量を減らす。
このような管理計画まで提案できれば、空き家管理の価値は作業時間だけでは測れなくなります。
異業種にはすでに「空き家管理に使える資産」がある
空き家ビジネス参入のために、すべてをゼロから始める必要はありません。
建設業なら住宅を見る目と修繕力。
不動産業なら所有者との接点。
造園業なら草木の管理。
警備業なら巡回と防犯。
士業なら相続や手続きの相談との接点。
介護関係者なら、施設入所などをきっかけに住まなくなる家の問題に接する機会があります。
重要なのは、
「自社の既存事業+空き家管理」
という発想です。
空き家管理士協会では、空き家管理に必要な知識を体系的に学ぶ資格・研修を通じて、異業種から空き家分野へ参入する事業者を支援しています。
単独ですべてを抱えるのではなく、全国の専門家・事業者とのネットワークを活用することも、地域で事業を継続する一つの方法です。
草を刈る仕事から、「家を見守る仕事」へ
お盆の実家で伸びた草を見る。
一見、小さな問題です。
しかし、その奥には、
「所有者が遠くに住んでいる」
「頻繁には帰れない」
「まだ売るかどうか決められない」
「でも放置するわけにはいかない」
という大きなニーズがあります。
だから空き家管理ビジネスでは、草刈りをゴールにしないことです。
草刈りを入口にして、家全体を継続的に管理する。
ここに、これから空き家ビジネスへ参入する事業者にとっての一つの勝ち筋があると、ぼくたちは考えています。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。
















