「空き家再生賃貸ファンド」始動。異業種が参入する余地はどこに
家賃は上がり、家は余る 同時に起きている二つの現実
久しぶりに地方の実家へ帰ると、ふと不思議な感覚におそわれることがあります。
東京では驚くほど家賃が高いのに、実家のまわりには誰も住んでいない家がいくつも並んでいる。この光景は、いまの日本の住宅事情をよく表しています。
賃貸市況を見ても、東京23区のマンション賃料は上昇が続いています。
とくに単身向けは長期にわたって高値圏で推移しているという調査もあって、「普通に働いていても、普通の家に住みにくい」という感覚は、以前より鮮明になってきました。
一方で、全国には約900万戸の空き家があります。
そのうち、賃貸や売却の予定もなく長期間使われていない住宅などは約385万戸にのぼります。
家が足りないのではなく、必要な人に必要な場所で届いていない。ここに事業としての着眼点があります。
「計画」から「実際の供給」へ動き始めた東京都
注目したいのは、東京都の動きが計画段階から実際の供給段階へ進んだことです。
都は官民連携でアフォーダブル住宅(無理なく払える家賃で住める住宅)を供給するファンドを立ち上げ、複数の事業者グループが参加する形で数百戸規模の供給を見込んでいるとされています。
2026年には第一弾の入居募集も始まりました。
さらに東京都住宅供給公社(JKK東京)でも、既存の公社住宅を活用し、子育て世帯や新婚世帯に契約家賃を一定割合減額して提供する取り組みが始まっています。
まだ市場全体を動かす規模ではありませんが、「新築を増やす」以外の住宅政策が本格的に動き出したこと自体に意味があります。
事業者にとっての本命は「既存住宅の活用」
ファンドの中には、中古戸建を取得・リフォームして子育て世帯などへ市場家賃より抑えた価格で貸し出す仕組みも含まれているとされます。これは事業者目線でとても示唆的です。
これまで別々に語られてきた「空き家対策」と「住宅価格対策」が、既存住宅の再生という一点でつながり始めたからです。新築で解決しようとすれば土地も資材も人手も必要ですが、すでにある家を活かす方向なら、地域に眠るストックがそのまま資源になります。不動産・建設・リフォーム業だけでなく、隣接業界が関われる余白もここに生まれます。
「地方の空き家に住めばいい」で終わらない理由
ただし、「東京が高いなら地方の空き家に住めばいい」という単純な話ではありません。
仕事、学校、病院、交通、家族の生活。住宅は建物だけを切り離して考えられるものではないからです。
これから求められるのは、単なる「空き家活用」ではありません。
人が住みたい場所と、すでにある住宅をどう結びつけるか。この発想が土台になります。
マッチング、再生、運営、そのどこに自社の強みを差し込めるか。参入を考えるなら、この問いから入ると輪郭が見えてきます。
住宅ストックを残すには「管理」という土台が要る
見落としてはいけないのが、空き家は放置しているだけでは住宅ストックとして残らないという点です。
雨漏り、湿気、害虫、雑草、給排水や屋根・外壁の劣化。人が住まなくなった家は少しずつ傷んでいきます。
数年後に「子どもが戻りたい」「貸してみよう」「移住者に使ってもらおう」と考えたとき、傷みが進んで多額の修繕が必要になっているケースは意外におおいんです。
つまり管理は、家を守る仕事であると同時に、未来の住宅を残しておく仕事でもあります。
再生や活用の話が盛り上がるほど、その前提となる管理の重要性が増していきます。
ここは異業種の事業者が入りやすく、かつ継続的な関係が生まれやすい領域です。
二つの問題を「別々にしない」視点が市場をつくる
東京では住める価格の住宅が足りない。地方では誰も住まない住宅が増えている。
この二つを別々の問題として扱うのではなく、どうつなげるか。
政策がその実験を始めたいま、民間側にも動く余地が広がっています。
そこにあるのは単なる「余った家」ではなく、これから誰かが住むかもしれない未来の住宅ストックです。
その入口を守り、活かし、つなぐ担い手が、これから確実に必要になります。
空き家ビジネスの市場性は、まさにこの一点にあります。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。
















