二地域居住で空き家管理ビジネスはどう変わる?「地方が主、都市が副」の新しい住宅市場
二地域居住という暮らし方が注目されています。
これまで一般的だったのは、「都市が主、地方が副」という形でした。
東京などの都市部に本宅があり、週末や休暇に地方のセカンドハウスへ行く。
便利で魅力的な暮らしですが、都市部の住宅費と地方の住宅維持費を同時に負担するため、誰でも選択できるスタイルとは言いにくい面がありました。
ところが今後は、その主従関係が逆転する可能性があります。
地方を生活の本拠にして、都市は必要な時だけ利用する。
この変化は、空き家ビジネスにとっても重要な意味を持っています。
テレワークはなくなるのではなく「選択肢の一つ」へ
コロナ禍のような全面的な在宅勤務は減りましたが、テレワークそのものが消えたわけではありません。
国土交通省の令和7年度テレワーク人口実態調査では、直近1年間にテレワークを実施した雇用者の割合は全国で16.8%。前年から1.2ポイント増加し、国土交通省も「安定基調」としています。
毎日会社に行く必要がなくなれば、住宅の持ち方にも変化が生まれます。
たとえば、
「東京70㎡+地方100㎡」ではなく、「地方100㎡+東京20㎡相当」
という発想です。
地方には生活できる家を確保し、都市ではホテル、マンスリー、シェア型住宅などを必要な日数だけ使う。
あくまで一つのモデルですが、こうした考え方が広がれば、二地域居住は「別荘を持てる人だけの暮らし」から、より幅広い層が検討できる住宅戦略へ変わっていく可能性があります。
日本にはすでに「地方側の住宅」が大量に存在する
ここで空き家市場が関係してきます。
総務省の2023年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%となっています。
なかでも賃貸・売却用や別荘などを除く空き家は385万6千戸あります。
新しく地方に家を建てなくても、
「親が住んでいた実家」
「相続した住宅」
「現在は誰も住んでいない祖父母の家」
という住宅ストックが、すでに各地に存在します。
これまでなら、「誰も住まないなら売却する」「貸せなければ解体する」という判断が中心でした。
しかし今後は、
「今は住まないが、5年後、10年後に自分が住む可能性がある」
という第三の選択肢が増えても不思議ではありません。
「将来住む空き家」をどう管理するか
ただし、将来住む予定だからといって、そのまま放置してよいわけではありません。
住宅は、人が住まなくなると傷みが見えにくくなります。
雨漏り、給排水設備、庭木、雑草、郵便物、防犯、害虫、近隣への影響など、小さな問題を長期間放置すると、再び住もうとした時に大きな修繕が必要になることもあります。
そこで重要になるのが「管理されたストック」です。
定期巡回、通風・通水、外観確認、庭の管理、小修繕、利用前の清掃や準備などを続けながら、住宅を将来利用できる状態で維持していく。
ここに、新しい空き家管理ビジネスの可能性があります。
空き家管理は「誰も住まない家を見る仕事」から変わる
これまで空き家管理というと、「遠方に住む所有者に代わって空き家を巡回するサービス」と捉えられることが多くありました。
しかし二地域居住が広がれば、顧客との関係はもっと長期的になります。
空き家から二地域居住拠点へ
最初は年に数回しか帰らない実家。
そこから月1回使う家になり、二地域居住の拠点となり、退職後には本宅になる。
空き家管理事業者は、その住宅の時間的な変化に伴走できます。
必要になるサービスも、
- 定期巡回
- 通風・通水
- 草刈り・庭木管理
- 小規模修繕
- 清掃
- 利用前準備
- 防犯対策
- リフォーム事業者との連携
- 地域事業者との橋渡し
などへ広がります。
つまり空き家管理は、単独の作業サービスではなく、住宅を眠らせず、次の利用までつなぐ住宅ストック管理サービスとして捉え直すことができます。
不動産・建設・士業・警備にも新しい商機
この市場は、空き家管理専門事業者だけのものではありません。
不動産会社なら売買・賃貸までの管理、建設・リフォーム会社なら点検や修繕、警備会社なら防犯、士業なら相続や権利関係、清掃事業者なら利用前後の整備と接点があります。
さらに自治体や地域金融機関、交通、観光、地域商店などにも関連してきます。
国も2024年11月、二地域居住を促進する改正法を施行し、自治体による計画づくりや、民間企業・NPOなどを「特定居住支援法人」として指定できる仕組みを設けています。
制度の存在だけで二地域居住が一気に広がるわけではありません。
しかし、「定住か観光か」という二択ではない人々を地域で受け入れる仕組みが整い始めていることは、空き家関連事業者にとって注目すべき変化です。
空き家管理の次の市場は「未来の居住」を支えること
空き家の出口は、売却、賃貸、解体、活用だけではありません。
将来自分や家族が住むために、適切に維持しておく。
二地域居住が広がれば、この選択肢の存在感は高まる可能性があります。
そして、その間を支えるのが空き家管理です。
空き家管理士協会では、空き家を適切に管理するための知識を持つ専門家「空き家管理士」の育成・認定、研修、情報提供などを行っています。
これから空き家ビジネスへ参入する事業者に必要なのは、「空き家をどう処分するか」だけを見ることではありません。
その家が5年後、10年後、誰にどのように使われるのか。
そこから逆算してサービスを設計することが、これからの空き家ビジネスの一つの勝ち筋になるのではないでしょうか。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。
















