空き家ビジネスの新市場「実家起業」とは?定年後の実家活用を仕事に変える方法
空き家900万戸時代、「処分する」だけではない活用策が必要に
みなさんもご存知かとおもいますが、全国の空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%となりました。そのうち、賃貸・売却用や二次的住宅を除く空き家は385万6千戸あります。
空き家が増えるなか、所有者に提示されてきた代表的な選択肢は、
「売る」
「貸す」
「壊す」
「管理する」
という4つでした。
もちろん、どれも重要な選択肢です。
しかし、地方を中心に「売りたくても買い手が見つかりにくい」「貸したくても賃貸需要が少ない」という住宅もあります。
そこで、もう一つ考えてみたいのが、
「その家を使って、小さな仕事をつくる」
という選択肢です。
ぼくはこの考え方を「実家起業」と呼んでいます。
「実家起業」とは何か
実家起業とは、大規模な会社をつくることを意味するものではありません。
例えば、長年教師をしてきた人なら少人数の学習教室、ものづくりの経験があればDIY教室、料理が得意なら料理教室。
地方の実家に庭や畑、納屋があれば、農業体験やワークショップなども考えられます。
ポイントは、
「家」だけを見るのではなく、「所有者が持っている経験」と組み合わせることです。
通常の起業では店舗や事務所を借りる必要がありますが、実家を活用できれば、物件取得費や賃料などの固定費を抑えて、小さく試せる場合があります。
月数万円程度の小規模な事業から始めるという考え方もできます。
空き家ビジネスで重要なのは「所有者だけでは始めにくい」こと
ここに、空き家ビジネスとしての大きなポイントがあります。
所有者が「この家で何かできないかな」と思ったとしても、そこから実際に事業を始めるまでには多くの壁があります。
この家は人を招いて大丈夫なのか。
改修はいくら必要なのか。
どんな事業なら地域に需要があるのか。
営業するには何か手続きが必要なのか。
一人ですべて調べようとすると、途中で止まってしまうことも珍しくありません。
つまり、これから求められるのは単に空き家を紹介する人ではなく、
「この家で何ができるか」を所有者と一緒に考える伴走者
ではないでしょうか。
実家起業から生まれる3つの仕事
1.構想・適性を考える仕事
最初の仕事は、「この人×この家なら何ができるか」を考えることです。
所有者の職歴、趣味、地域とのつながり、建物の状態、庭・畑・納屋などを確認し、現実的な活用方法を整理します。
これは、不動産業や士業、空き家相談を行っている事業者が、既存業務に加えやすい領域でもあります。
2.改修・設備・手続きを支える仕事
人を招く場所として使うのであれば、安全性や設備について確認が必要になります。
ここでは建設・リフォーム業者の出番です。
また、事業内容によって行政手続きや許認可などが関係する場合には、行政窓口や適切な専門家との連携も必要になります。
つまり一件の空き家活用から、建築、不動産、士業など複数業種の仕事につながる可能性があります。
3.活用開始後の「空き家管理」
そして、空き家管理事業者にとって特に重要なのがここです。
実家起業をするからといって、365日その家に住むとは限りません。
例えば、都市部の自宅を維持しながら月の一部だけ地方の実家で仕事をする「二地域居住型」の働き方も考えられます。
国も現在、二地域居住の促進に向けた事業や地域での受け入れ体制づくりを進めています。
そうなると、所有者が不在になる期間の巡回、通風、庭の管理、建物点検などが必要になります。
活用を始めることで、逆に「管理」という継続的な仕事が生まれる。
ここは空き家ビジネスとして非常に重要な視点です。
首都圏と地方では「売るもの」が違う
実家起業を考える際、地域差も無視できません。
首都圏や都市部では、建物の「立地」そのものに価値があるケースがあります。
相談室、小規模サロン、教室、レンタルスペースなど、場所を活用する発想が考えられます。
一方、地方では同じ方法が通用するとは限りません。
住宅需要が弱い地域では、「建物を貸す」だけではなく、
庭、畑、納屋、自然、地域文化、所有者の経験
などを組み合わせ、その場所でしかできない体験やサービスを考える必要があります。
地方の空き家ビジネスでは、住宅そのものだけでなく、**「家の周辺にある資源まで商品として見る視点」**が重要になってくるでしょう。
空き家管理事業者は「相談の入口」になれる
ここで空き家管理事業者の役割も変わってきます。
これまでは、
「月に一度見に行く人」
だったかもしれません。
これからは、
「この家をどうするかを一緒に考える人」
になれる可能性があります。
相談を受け、建物を点検し、必要に応じて不動産・建築・士業・地域事業者につなぎ、活用開始後は管理を続ける。
つまり、
相談 → 点検 → 活用提案 → 改修・専門家連携 → 継続管理
という一つのビジネスモデルが見えてきます。
これは一社ですべて行う必要はありません。
むしろ、それぞれの専門家が連携できる地域ネットワークをつくることが重要です。
「何かに使えない?」を聞き逃さない
空き家ビジネスの新しい市場は、大きなサービス名をつけて突然始まるとは限りません。
所有者が何気なく言う、
「この家、何かに使えないかな」
という一言から始まります。
これから空き家相談を受けるときは、売却・賃貸・解体・管理に加えて、
「この家を使って、小さく何か始める方法も考えてみませんか」
という5つ目の選択肢を加えてみてはいかがでしょうか。
そこから、不動産、建設、士業、空き家管理などを横断する新しい地域ビジネスが生まれる可能性があります。
空き家管理士協会では、空き家管理に必要な知識を学ぶ資格・研修に加え、地域や業種を越えたネットワークづくりを進めています。
これからの空き家ビジネスでは、「家を管理できる人」だけでなく、所有者の次の一歩を支えられる人材がますます重要になると思います。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。
















