空き家の解体跡地を「防災インフラ」に活かす考え方
「土地を低くすればいい」では終わらない
空き家の解体跡地を少し低くし、大雨のときに雨水を受け止める。
発想は理にかなっていますが、ただ掘って低くすればよいという単純な話ではありません。
低くしただけでは水が滞留したり、隣地へ流れ込んだり、地盤や擁壁に悪影響が出る可能性があります。
正確にいうと設計・施工から、その後の管理までを一続きで考える必要があります。
三つの条件。ためる・染み込ませる・逃がす
まず、ためること。
敷地の一部を少し低くし、雨水が一時的に集まる浅い窪地をつくります。深い池は必要ありません。
次に、染み込ませること。
表面をコンクリートで固めず、土・砂・砕石・透水性舗装・植栽などで地中へ水が入りやすくします。ただし「見た目が土だから浸透する」とは限りません。
そして、逃がすこと。
想定を超える豪雨では水が必ずあふれます。あふれた水をどこへ安全に導くかを事前に設計し、隣地方向へは流さない。
この排水計画の欠如が、のちのトラブルにつながりやすい部分です。
「更地だから浸透しやすい」とは限らない
解体・建設の現場を知る事業者ほど実感がある論点です。
解体では重機が敷地に繰り返し出入りし、地面が締め固められます。
その結果、更地になっても浸透性が高まるとは限らず、解体前より水が染み込みにくくなることもあります。
跡地を防災に活かすには、表土をほぐす、砕石層を設けるといった仕上げまで視野に入れる判断が求められます。
すべての土地に浸透型が適するわけではない
粘土質、地下水位の高い土地、傾斜地、擁壁の近く、隣地との距離が近い場所などでは、大量の水を地下へ入れることが適さない場合があります。
土地の性格に応じて、浸透を主にするか、いったん貯留してゆっくり排水するか、植栽で流出を抑えるかが変わります。
すべての水を吸収させる必要はなく、豪雨時のピーク流出を少しでも遅らせられれば意味があります。
ふだんは空き地、豪雨時だけ防災施設
大規模な調整池にすれば土地は他に使えなくなります。
ふだんは緑地や広場として地域が利用し、豪雨時だけ水を受け止める設計にできれば、日常利用と防災を両立できます。
防災専用地ではなく、日常利用に防災機能を重ねる考え方です。
国の「流域治水」との接続
この発想は独自のものではなく、国土交通省が進める「流域治水」の方向性と重なります。
流域治水とは、河川の内部だけで洪水を防ぐのではなく、流域全体で雨水を貯留・浸透させて防災・減災に取り組む考え方です。
その中で、雨水を一時的にため地中へゆっくり浸透させる「雨庭」も具体的な手法として位置づけられています。
増え続ける空き家の解体跡地を、この流れに接続できないかという問題提起です。
「跡地管理」という新しい事業領域
雨を受け止める土地は、放置すれば落ち葉・土砂・排水口の詰まりで機能が低下します。
つくって終わりではなく、継続的な管理が前提です。
従来の空き家管理は建物の巡回・通風・草刈り・防犯が中心でしたが、建物のなくなる土地が増えれば、業務は「建物の管理」から「土地と地域環境の管理」へ広がります。
この跡地管理は、建設・不動産・造園・清掃・警備など、多くの業種の既存事業と組み合わせられる領域です。
善意ではなく仕組みで広げる
所有者に自己負担での防災仕上げを求めるだけでは普及しません。
着目したいのは制度の「あいだ」です。
空き家の解体補助は各自治体にあり、雨水貯留浸透施設への助成を用意する自治体もあるようですが、この二つは別々に運用されているのが実情です。
解体補助を受ける際に跡地の防災仕上げを選べば補助が上乗せされる、といった制度もおもしろいと思うんですよね。
制度設計は行政や専門家の領域ですが、現場と行政が一緒に検討できる余地は大きいと思います。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。
















