空き家の解体跡地を豪雨対策に。「雨庭」という発想と補助金仕様の可能性
解体したあとの土地は、たいてい「待っている」
今年もまた、全国のあちこちで豪雨の被害が続いています。
ニュースで浸水した街や濁流を見るたびに、胸が痛みます。
被害に遭われた方、いまも片づけや生活の立て直しに追われている方に、心よりお見舞い申し上げます。
空き家を解体すると、その土地の多くは更地になり、砂利が敷かれたり草が生えたりしたまま、売却を待つ状態になります。
所有者からすれば、老朽化した建物という負担をようやく手放し、次の買い手を待っている段階です。
これ自体はごく自然なことですが、売れるまでの「待ち時間」に、その土地は基本的に何も生み出していません。
この空白の期間に、地域の役に立つ使い道はないか。ここが今回の出発点です。
いま豪雨で起きているのは「水の行き場不足」
近年の雨は、長時間しとしと降るより、短時間に集中して降る傾向が強まっているといわれます。
こうした雨が降ると、屋根から道路へ、道路から側溝へ、そして下水や河川へと、大量の水が一気に流れ込みます。
問題は、雨が降ること自体ではなく、水が一度に流れ込むことにあります。
同じ総量でも、流れ込むスピードが速いと、側溝や河川が受け止めきれなくなる。雨との勝負は「量」だけでなく「速さ」の問題でもある、という視点が重要です。
解体跡地を「雨の受け皿」にするという発想
そこで浮かぶのが、解体跡地を周囲より少し低くし、水が染み込みやすい表面にして植栽を入れることで、豪雨時に水を一時的に受け止める土地にできないか、という考え方です。
こうした構造には「雨庭(レインガーデン)」という呼び名があります。
ざっくりいえば、降った雨をすぐ下水に流さず、浅いくぼ地や砂利層にいったんためて、ゆっくり地中に浸透させる植栽空間のことです。海外では都市の治水策として広がっており、日本でも事例が出はじめています。
これを新たに施設として造るのではなく、空き家を壊したあとの土地で実現できないか、という点に事業としての面白さがあります。
1軒分でも、雨の量は小さくない
たとえば150㎡の土地に50mmの雨が降ると、その土地に落ちる雨の総量は約7.5㎥、7,500リットルほどになります。
これはあくまで「降ってくる総量」であって、そのまま貯留できる量ではありません。
実際に受け止められる量は、どれだけ掘り下げるか、土がどれだけ水を吸うかによって変わります。
それでも、住宅1軒分の土地に降る雨だけでこの規模になることを考えると、掘り下げて受け皿にしたときの「余白」としては決して小さくないと考えられます。
狙いは「防ぐ」ではなく「遅らせる」
ここは誤解されやすい点です。跡地を1区画整えたところで、洪水そのものを止められるわけではありません。
狙いは、水が道路や側溝へ一気に流れ込むタイミングを少しずらすことにあります。
各所でほんの少しずつ水を引き受け、流れ込むピークをずらせれば、河川や下水が受け止めきれる範囲に収まる可能性が高まります。
派手ではありませんが、こうした地味な「時間稼ぎ」の積み重ねが効いてくる、という発想です。
誰が担うのか?解体補助金の「仕様化」という提案
現実には、売却を待つ土地を所有者が自腹で掘り下げ、植栽まで整えるのは考えにくいことです。手間もコストもかかるからです。
そこで考えられるのが、これを解体補助金の「仕様」に組み込む方向です。
多くの自治体が老朽空き家の解体に補助金を設けていますが(制度の有無や内容は自治体によって大きく異なります)、その条件や加点項目に「跡地へ一時的な雨水の貯留・浸透機能を持たせること」を加えられないか。
単に更地にするだけでなく、水を受けられる形に整えれば補助が受けやすくなる、といった設計です。
補助金の仕様を決めるのは自治体であり、制度を設計する国です。この提案のあて先は、最終的には行政ということになります。
事業者にとっての意味と、今からできる準備
こうした仕組みが動きはじめれば、跡地の造成、浸透面の整備、植栽の設計・維持管理といった場面で、解体・造園・土木・リフォームなど複数の業種に新たな役割が生まれる可能性があります。
空き家管理を軸に、防災という接点で異業種と連携する余地も広がります。
いますぐ工事の受注が発生する話ではありませんが、雨庭やグリーンインフラの基礎知識を押さえておくこと、地元自治体の解体補助金の内容を把握しておくこと、そして「跡地に防災機能を持たせる」という発想を地域で共有していくことは、今からでも始められます。
制度は、そうした声が地域から積み上がることで少しずつ形になっていくものだからです。
空き家が増えること自体が問題の本質ではありません。
壊したあとの土地まで含めて、誰からも関心を持たれず放置されることが問題なのだと、ぼくたちは考えています。
適切に目を向ければ、その土地は地域の役に立つ余白になります。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。
















