要介護期の住まいの相談は新しい市場になるか。事業者が知っておきたい需要の構造

親が施設に入ったとき、家のことは誰が気づいて、誰につなぐのか?

親が施設に入ったとき、家のことは誰が気づいて、誰につなぐのか?

ケアマネジャーの負担を増やす提案ではない

介護と住宅管理の連携というと、「ケアマネジャーに家のことも見てもらう」という発想になりがちです。

けれど介護の現場では、本来の業務を超えた相談がすでに多く持ち込まれていると言われています。そこに住宅管理まで加えれば、現場の負担は限界を超えてしまいます。

また、ケアマネジャーには公正・中立という原則があり、特定の事業者を利用者に勧めることには慎重な立場です。連携を考えるうえで、この二点はまず押さえておきたい前提です。

気づく人、つなぐ場所、管理する人

気づく人

起点になるのは、ケアマネジャー、病院の医療ソーシャルワーカー、施設の相談員です。医療ソーシャルワーカーは、入院した人の退院後の暮らしや制度について相談に乗る病院のスタッフです。転倒から入院、施設入所へと進むケースでは、家族が最初に家のことを口にするのは、病院での面談の場であることが少なくありません。

この人たちに期待したいのは、「家のことも相談できる窓口があります」と伝えてもらうことだけです。

つなぐ場所

つなぐ役割は、地域包括支援センターや自治体の空き家相談窓口が担う形が考えられます。地域包括支援センターは、市町村が設置する高齢者の総合相談窓口です。ここが地域の住宅管理の担い手の情報を持っていれば、ケアマネジャー個人が事業者を名指しする必要はなくなります。

管理する人

実際の管理は、空き家管理士をはじめとする住宅管理の担い手が、家族と契約して行います。定期的な見回り、写真つきの報告、雨漏りや庭木の異変があったときの専門業者への手配などが中心です。

対象は、基本的に持ち家に住む高齢者を想定しています。賃貸住宅には貸主や管理会社がいますが、持ち家では日常的な管理の責任が基本的に所有者側にあるためです。施設入所後も家族が同じ家に住み続ける場合は、留守宅管理が必要ないケースも多いでしょう。

この連携で生まれる需要

見えにくかった「要介護期の住まいの相談」

これまでも、要介護期の家の困りごとは存在していました。ただ窓口がなかったため、家族が一人で抱えるか、誰も手をつけないまま放置されてきました。連携の仕組みができれば、この需要が表に出てきます。

関われる業界

不動産業は将来の売却や賃貸の相談、リフォーム業は在宅期の手すりや段差の改修と在宅復帰に向けた準備、司法書士や弁護士は判断能力が低下したときの財産管理の相談、地域金融機関は管理費の支払いや資産の相談に関わる余地があります。警備業や清掃業にとっては、見回りや片付けそのものが本業の延長です。介護・福祉事業者は、気づく人として流れの起点に立つ存在です。

リスクかチャンスか

事業機会であることは確かですが、条件があります。介護の入口に関わる仕事は信頼が前提です。困っている家族への強引な営業は、福祉の現場からの信頼を一度で失わせます。丁寧な見守りを続けた事業者ほど、その家族が将来なにかを決めるときに最初に相談される存在になっていきます。

今のうちに準備しておきたいこと

準備として考えられるのは三つです。地域包括支援センターと顔の見える関係をつくること。点検や報告の手順を決め、料金をわかりやすく示しておくこと。そして、家族と一緒に「誰が判断するか、鍵、費用、連絡先、家の状態」を確認できる簡単なシートを用意しておくことです。

自治体の小さな実験から

国土交通省の空き家対策モデル事業では、官民連携による相談体制づくりなどが後押しされています。協会代表の山下は個人の提案として、その連携先に福祉の現場を加えることを挙げています。まずは自治体単位で、ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーと住宅管理の担い手をつなぐ試行を行い、成果に応じて留守宅管理費の補助や「実家管理費控除(仮称)」のような支援へ発展させていく構想です。住宅の維持管理そのものは、基本的に介護保険の対象外とされているため、別の形の支えが求められています。

家を守ることは、帰る場所を守ること

施設に入っても、二度と家に戻らないと決まったわけではありません。

在宅復帰、家族の帰省先としての活用、将来の売却や賃貸。どの選択肢をとるにしても、家が良い状態で残っていることが前提になります。

住宅管理は、本人と家族が選べる状態を保つ仕事でもあります。

空き家管理士協会は、空き家の可能性に挑戦します。

この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。

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