災害級の暑さが変える建設業。空き家管理が「夏の受け皿」になる理由

猛暑日は、もう「特別な日」ではなくなった

かつて猛暑日は年に数日の出来事でした。

ニュースで「今日は特別に暑い一日でした」と伝えられる、そういう日です。

いまは違います。7月から8月にかけて、そうした日がずらりと並ぶ。特別ではなく、夏の標準になりつつあります。

それでも建設の現場は止めにくい。

工期があり、元請の段取りがあり、他職種との兼ね合いがある。

個々の事業者が単独で「今日は危ないのでやめます」と判断できる構造にはなっていません。

塩飴、空調服、こまめな休憩。対策そのものは進んでいます。ただ、屋外で身体を動かすという事実は変わらない。

屋根の上は屋根の上ですし、真夏のコンクリートは真夏のコンクリートです。

対策の議論は十分にされてきました。今回考えたいのは、その手前にある構造の話です。

「人手不足だから仕事はある」をどう読むか

この言葉が広まりやすい理由

建設業についてよく言われるのが、「人手不足だから仕事はいくらでもある」という話です。

実際、職人の高齢化と若手の減少は各所で指摘されており、単価が上がってきているという声も聞きます。嘘ではありません。だからこそ広まりやすい。

ただし、その仕事は全部「工事の仕事」

現場の方と話していると、少し違う手触りがあります。

仕事はある。ただ、その仕事は全部「工事の仕事」です。そして工事は、天気と季節に握られている。

一人親方であれば、もっと直接的です。動かなかった日は、そのままゼロになる。一方で車両費も道具の維持費も保険も、毎月同じ顔をして請求書を出してきます。

だから無理をする。無理をせざるを得ない構造がある。これは根性論で解決する話ではないと考えています。「休め」と言うだけでは、休んだ分を埋める仕組みがないまま困るだけです。

季節で仕事を組み替えるという発想

必要なのは、一年を通して同じ仕事を同じ形で続ける、という前提を外すことです。

春と秋は屋外工事を集中させる。気候もよく、身体も動く。ここは従来通りで構いません。

問題は、真夏の日中、真冬の朝、台風の前後です。この時間帯に、屋外作業以外で成立する仕事を持っておく。

書けば当たり前に見えますが、実行が難しいのは「屋外作業以外の仕事」の中身が思いつかないからです。事務作業は売上になりませんし、いきなり別業種を始めるのも現実的ではありません。

ここで、空き家管理という選択肢が出てきます。

空き家管理とは何をする仕事か

空き家管理とは、ざっくり言えば、人が住んでいない家を所有者に代わって定期的に確認し、状態を報告する仕事です。

主な業務は次のようなものです。

外から建物を一周し、雨漏りの跡、外壁のひび、屋根の瓦のずれなどを確認する。

郵便受けや庭木、雑草の状況を見る。

屋内に入れる契約であれば、窓を開けて風を通し、水道を少し流す。

台風の前後に様子を見に行く。

そして写真をつけた報告書を作成し、所有者に送る。

必要に応じて、小規模な修繕を提案する。

注目したいのは、時間帯を選べる点です。

巡回は早朝でも成立します。

日が昇りきる前に数軒を回り、暑くなってから車内や事務所で報告書をまとめる。

真夏の日中に屋根の上にいなければならない仕事とは、性質が異なります。

ただし、これだけで事業が完結するという話ではありません。

「動けない日がまるごとゼロになる」状態から抜ける手段、という位置づけが現実的だと考えています。

建設業だからこそ発揮できる強み

見回りサービスとの違い

空き家の見回りサービス自体は、警備会社、不動産会社、地域によってはシルバー人材センターなども手がけています。

ただ、多くの場合は「見て、写真を撮って、報告する」で完結します。異常の有無を記録する仕事です。

判断できることの価値

建物を扱ってきた方が同じ家を見ると、見えるものが変わります。

この外壁のひびは、放置して問題ないものか、水が入るものか。この屋根のずれは、次の台風で影響が出る可能性があるのか。この床のたわみは、シロアリなのか経年なのか。

そして、修繕するとしておおよそいくらで、いつまでに手を打つべきか。現場を踏んでいなければ出てこない判断です。

さらに、直せる。あるいは直せる人を知っている。板金、水道、電気。地域のネットワークは、あとから構築しようとしてもなかなか作れない資産です。

所有者の立場で考えると、この差は大きい。「異常がありました」とだけ伝えられても困ります。本当に必要なのは、「これは急がなくて大丈夫です」か「これは早めに手を打ちましょう、方法はこうです」のどちらかです。

所有者はなぜ動けないのか

参入を検討する際に理解しておきたいのが、所有者側の心理です。

空き家を所有する方の多くは、その家をどうしたいかを決めていません。

売るのか、貸すのか、いつか誰かが住むのか、いずれ解体するのか。

決められない理由があります。

まず、その家はたいてい親の家です。自分が育った家であることも多い。仏壇が残っていたり、荷物が手つかずだったりする。「片付ける」という行為そのものに、気持ちの重さがあります。

次に、兄弟姉妹がいる。単独では決められない。かといって、わざわざ集まって話し合うほどの緊急性もない。今のところ、誰も困っていないからです。

そして、誰に相談すればいいか分からない。不動産会社に行けば売却の話になりそうですし、解体業者に電話すれば解体の話になる。まだそこまで決めていないのに。

だから止まります。止まったまま何年も経過する。怠慢ではなく、そうなりやすい構造だと捉えています。

ここが重要なところです。「管理」は、この方たちにとって、いちばん決断の軽い選択肢になります。

売らなくていい、壊さなくていい、家族を説得しなくていい。荒れないように見ておいてもらう、それだけです。

だから入口になりやすい。

そして関係ができると、その先の相談も自然に寄せられるようになります。

数年後に「そろそろどうしようかと思っていて」という話が出てくる。

なお、売買の仲介や相続に関する法律的な助言は、それぞれ資格が必要な領域です。

管理を担う事業者がすべてを引き受けられるわけではありません。

ただ、所有者が次の判断をする際に、最初に相談される立場にはなれます。

その入口を持っているかどうかの差は小さくないはずです。

空き家管理士協会は、空き家の可能性に挑戦します。

この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの空き家ビジネスnote」でも解説しています。

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