空き家活用の新潮流。譲渡型賃貸住宅が「住む人」を増やす仕組み
「賃貸で様子見したい。でも、いつかは自分の家も持ちたい」
地方移住や空き家活用の現場では、この気持ちの揺れがいちばん大きな壁になります。
いきなり購入は怖いし、賃貸だけだと将来設計が描きづらい。
そこで注目したいのが、賃貸と購入の中間にある「譲渡型賃貸住宅」という仕組みです。
住みながら地域を確かめ、納得したら最終的に持ち家になる。
空き家の新しい出口としても、ビジネスの新しい入口としてもヒントが詰まっています。
譲渡型賃貸住宅とは?「賃貸なのに最後は自分のもの」
譲渡型賃貸住宅は、ざっくり言うと 最初は賃貸として住み始め、一定期間家賃を払い続けることで、最終的に土地と建物が譲渡される仕組みです。
徳島の事例では、期間は約16年という形で動き始めています。
賃貸と購入のハイブリッドなので、言い換えるなら「住みながら、買う準備をする住まい方」。
もちろん契約条件はケースによって異なり、途中解約や修繕負担などは要確認ですが、発想としてはかなり面白いモデルです。
「空き家を買って」と言われても難しい人が増えている
空き家活用の定番として「安い空き家を買ってリノベしよう」という話があります。
これは方向性として間違いではありません。
ただ現場で見えてくるのは、買うという行為の心理ハードルが想像以上に高いという現実です。
移住・若い世代の不安は「地域が合うか分からない」
・住んだことがない
・仕事が続くか分からない
・土地勘がない
この状態で購入を決断するのは、冷静に考えるほど怖い。
ローン以前に「失敗したらどうしよう」が重いんですよね。
解決の鍵は「まず住んでみて、気に入ったら自分のものに」
ここで譲渡型賃貸住宅が効いてきます。
最初は普通に賃貸で住む → 地域や暮らしに慣れる → 仕事や生活が固まる → 「ここでいける」と思えたら、そのまま継続して最終的に譲渡へ。
この流れなら、購入の意思決定が“ドカン”ではなく“じわじわ”になります。
結果として、住む側の不安が下がり、地域側も空き家の利活用が進む。
空き家問題の本質が「放置されること」だとするなら、誰かが住み、手入れし、関わる入口が増えることが価値になります。
オーナー側にもメリットはあるのか?
「でも最後に譲渡するなら、貸す側は損しない?」と思う人もいます。
ぼくも最初そう思いました。
ただ、地方には「売ります」と言っても買い手がつきにくい物件が少なくありません。
その点、賃貸なら住み手が見つかる可能性が上がる。
さらに一定期間の家賃収入が入り、管理の手間や維持の負担が整理できるケースもあります(ここは契約設計次第)。
最終的に譲渡するとしても、荒れて価値が落ちるより、住んでもらって地域に関わってもらう方が未来が明るいのは確かです。
空き家ビジネスの視点で見ると「二択を外す」モデル
空き家ビジネスに興味がある人にとって、この仕組みのポイントはここです。
「売る」か「貸す」かの二択をやめて、中間を提案できること。
借り手の価値=試せる安心感
・暮らしてみて判断できる
・いきなり購入リスクを背負わない
・生活の実感から将来設計を組み立てられる
貸し手の価値=長期収益+出口戦略
・長期で住んでもらえる可能性
・放置を防ぎ、建物の劣化を抑えやすい
・譲渡まで含めた出口を描ける
参入者の価値=設計・運用を「仕事」にできる
ここがビジネスとして一番おもしろいところ。
譲渡型賃貸は、単なる仲介というより 契約設計・管理運用・コミュニティ支援まで含めた仕組みの提供になりやすい。
例えば
・物件の維持管理(巡回・通風・清掃・見守り)
・入居前の整備・軽リフォーム手配・入居者向けの暮らしサポート(移住支援、地域案内)
・オーナーとの運用ルール整理(修繕負担、退去時、譲渡条件など)
もちろん法務・税務・金融の論点は個別性が高いので、専門家連携が前提です。
でも少なくとも、「こういう方法もある」と知っているだけで、提案の幅は一気に広がります。
協会としての提案。
譲渡型賃貸住宅のような仕組みが広がるほど、地域には「調整できる人」が必要になります。
空き家管理は、物件だけを見て終わりじゃありません。
持ち主の不安、住む人の不安、地域の不安をほどいて、ちゃんと運用に乗せる。
その役割を担える人材を増やすことが、協会の価値であり、空き家ビジネスの勝ち筋の一つだと考えています。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」で詳しく解説しています。
















