空き家ビジネスは「解体」から「つなぐ」へ。既存事業との組み合わせで新しい需要が生まれる時代

「空き家管理って、見回りをする仕事でしょ?」

そう思っている方に、少し違う見方をお伝えしたいと思います。

建築費の上昇、職人不足、省エネ基準の強化。

新しく建てることが難しくなる時代に、「今ある家をどう活かすか」という問いが、住宅政策だけでなくビジネスの領域でも重要になってきています。

不動産や建設はもちろん、介護・清掃・警備・士業など、空き家と接点を持てる業種は思っているより幅広い。

この記事では、空き家管理の社会的な意義を整理しながら、既存事業との組み合わせでどんな可能性が生まれるかをご紹介します。

空き家対策は「壊す話」になりやすいが、それだけでは足りない

空き家問題の報道といえば、倒壊寸前の廃屋や行政の撤去指導が中心です。

「危険な家は早く解体すべき」というメッセージが繰り返されるなかで、「空き家対策=解体推進」というイメージが社会に定着しつつあります。

もちろん、本当に危険な状態にある建物は、解体という判断が必要です。

雨漏りで構造が傷んでいる家、近隣に被害が及んでいる家。そうしたケースは現場でも実際にあります。

ただし、「空き家=壊すもの」という前提で話が進んでしまうと、見落とされることがあります。まだ使える家が、議論にも上らないまま処理されていく、ということです。

新しく建てることが、難しくなっている

ここ数年で、建設業界を取り巻く環境は大きく変わりました。

建築コストと人手不足が同時進行している

資材費・人件費の上昇は続いており、職人の高齢化と担い手不足も深刻です。

「やりたくても工事が組めない」という声は、現場でも珍しくなくなりました。

省エネ基準の強化や建築確認制度の見直しも重なり、新築のハードルは着実に上がっています。

日本は「住宅が足りない国」ではない

日本の住宅総数は世帯数を上回っており、空き家は増え続けています。

問題は「家がないこと」ではなく、「使える家が使われないまま傷んでいくこと」です。

この二つの変化を合わせて考えると、空き家対策の意味が変わって見えてきます。

危険な家を処理するだけでなく、まだ使える家を次の誰かへ渡すことも、空き家対策の重要な柱になり得ます。

「つなぐ」とは何をすることか

「解体ではなくつなぐ」という言葉は、響きとしてはわかりやすい。

ただ、具体的に何をするのかが見えにくいのも事実です。

ここでは、三つの意味に整理してみます。

建物の時間をつなぐ。 定期的な通風・通水、雨漏りの早期発見、外回りの管理——こうした積み重ねが、「今すぐ使えなくても、将来使える状態」を維持します。管理とは、家に時間を与える仕事です。

人と家をつなぐ。 空き家の多くは相続で生まれます。所有者は「売りたい」「壊したい」というよりも、「どうしたらいいかわからない」でいることがほとんどです。使いたい人や活用を検討する事業者と所有者をつなぐ役割が、ここに必要になります。

地域と未来をつなぐ。 二地域居住の拠点、週末の仕事場、孫世代の住まい——地方の空き家は、見方を変えれば「まだ誰も使っていない可能性」です。地域の住宅インフラを守るという意味でも、つなぐ仕事には社会的な役割があります。

既存事業との組み合わせで、空き家に関われる

ここからが、事業者にとって最も関係のある話です。

空き家管理は、ゼロから新しい事業を立ち上げなくても、既存のサービスと組み合わせることで自然に広がります。むしろ、現場に行ける・所有者とつながれる・状態を把握できるという既存の強みが、そのまま「つなぐ」機能になり得ます。

業種別の接点イメージ

清掃業: 定期的な建物内外の確認は、空き家の状態チェックと重なります。「先月より雨染みが広がっていますよ」という一言が、所有者の意思決定を動かすこともあります。

介護事業者: 在宅介護をしていた親御さんが施設に入った後の「留守宅」を把握しているのは、実は介護事業者です。その後の対応について、子世代とつながっている立場にあります。

警備会社: 巡回エリアで空き家の外観異常を合わせて記録するだけで、所有者への情報提供という新しい価値が生まれます。

士業(司法書士・行政書士等): 相続手続きの中で「家どうします?」という話は必ず出ます。そこで管理の選択肢を示せるかどうかが、依頼者の安心感に直結します。

リフォーム・工務店: 修繕の現場で空き家の実態を最もよく見ています。「直せばまだ使える家かどうか」を判断できる立場にあります。

共通しているのは、「空き家管理を本業にしなくても、今の仕事の延長で関われる」という点です。

今のうちに何を準備するか

難しい話をしてきましたが、明日できることはシンプルです。

まず、自分の既存事業の中で「空き家に接触している場面」を書き出してみてください。清掃、巡回、相続手続き、修繕、訪問介護——意外と多いはずです。

次に、その場面で所有者に何を伝えられるかを考えてみてください。状態の変化を記録する、管理の選択肢を案内する、連携できる専門家を紹介する。小さな一歩でも、それが「つなぐ」機能になります。

空き家管理士は、こうした連携を束ねる役割として機能しています。全部自分でやる必要はなく、得意なことを持ち寄れる仕組みがあれば、それで十分です。自分の事業と空き家がどこかでつながっているかもしれない、という視点を持つことが、まず最初の一歩になります。

 

空き家管理士協会は、空き家の可能性に挑戦します。

この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの空き家ビジネスnoteでも解説しています。

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