相談窓口もサービス会社も増えた。それでも「現場を担う人材」だけが足りていない理由
民間のお金と人が、空き家管理に動き始めた
近年、空き家管理に特化したサービス会社が相次いで資金を調達しています。
NPO法人が新たな相談センターを開設する動きも各地で出てきました。
以前は「行政が取り組む社会課題」というイメージが強かった空き家問題が、民間事業として本格的に動き始めています。
これは市場として成熟してきたサインです。
空き家管理が「個別の困りごと」から「社会的な市場」へと育ちつつある。歓迎すべき変化だとぼくは受け止めています。
ただ、同時に一つの懸念もあります。それは…
【現場を担える人材が、まだ全然追いついていない】
相談できる場所は増えた。管理を請け負う会社も増えた。
でも現場に出られる人材の質と量は、市場の伸びに比べてまだ十分ではありません。
空き家管理は、ただ見回ればいい仕事ではありません。
建物の劣化の兆候を読む目、草木の状態を判断する経験、近隣への影響を読むセンス、相続前後の家族の事情に寄り添う人間力
そういうものが現場では求められます。
知識も基準も持たないまま参入した場合、所有者に不安を与えたり、思わぬトラブルになったりするリスクもあります。
市場が広がれば広がるほど、担い手の質が問われるようになる。これはどの業界でも同じことです。
「決まらない時間」を支える仕事
空き家対策の議論は、「売却・解体・活用」に集中しがちです。
でも実際の現場では、すぐに答えが出ないケースがほとんどです。
親が施設に入った。実家が空き家になった。
でも、きょうだいの意見がまとまらない。
買い手がすぐ見つかる保証もない。
そういう「決まらない時間」の中で、建物は確実に劣化していきます。
草は伸び、雨漏りは広がり、近隣からの苦情が来る。
気づいたときには行政から通知が届いていた、というケースも珍しくありません。
最近は、特定空き家や管理不全空き家に対する行政の対応も厳しくなる傾向があります。
固定資産税の優遇措置が外れる場合があったり、勧告・命令の対象になることもあるとされています。
自治体によって運用が異なるため、詳細は各窓口での確認が必要ですが、こうした状況に知らないうちに陥っていた、という相談をぼくもよく受けます。
空き家管理は、その「決まらない時間」を支える仕事です。
出口が決まるまでの間、建物を荒らさず、地域に迷惑をかけず、次の判断につなげるための時間を作る。
地味に見える仕事ですが、これが空き家問題の解決に一番近い一歩です。
所有者が動けない理由は怠慢ではありません。
気持ちと状況が追いついていないだけです。そこに寄り添える人材が求められています。
地域の事業者が担い手になれる理由
不動産業、建設業、リフォーム会社、介護周辺のお仕事をされている方。
空き家管理は、あなたの仕事とかなり近い場所にあります。
たとえば、リフォーム会社が空き家の定期巡回を担う。
訪問先で建物の傷みに気づいて早めに手を打てる。
工事の単発受注だけでなく、月に一度、家を見守る継続的な仕事が生まれます。
建設・造園業の方なら、草木の管理や外壁点検はすでに得意分野のはずです。
介護周辺の方には、また別の切り口があります。
親が施設に入る瞬間、家族は「実家をどうするか」という課題を同時に抱えます。
そのタイミングで「留守になった実家の管理もお手伝いできます」と言える事業者がいたら、どれだけ助かるか。
しかも、その家族とはすでに信頼関係がある。こんなに条件のいい出発点はなかなかありません。
空き家管理は継続的に関わる仕事です。
地域に根ざした顔の見える事業者の方が向いている場面が多く、全国チェーンにはできないことが地域の小さな事業者にはできる。そこに可能性があります。
空き家管理士という資格が果たす役割
空き家管理士協会では、「空き家管理士」という資格の普及に取り組んでいます。
ひとことで言えば、「建物と所有者と地域をつなぐ、現場の見守り役」です。
具体的な業務は、建物の定期巡回・状態確認、草木・雨漏り・外壁・雨樋・郵便物などのチェック、写真付きでの所有者への報告、防犯・防災リスクの早期発見、必要に応じた専門家・行政への橋渡しなどです。
こうした業務を一定の基準をもって担える人材を育てる。それが協会の目標です。
「なんとなく見回る」から「地域を支える専門的な仕事」へ。
空き家が荒れてから動くのではなく、荒れる前に予防する民間の機能として、空き家管理士の役割はこれから大きくなっていくとぼくは考えています。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。
















