「空き家を放置すると50万円」は本当に機能しているのか

命令の件数は細かく公表されている

国土交通省は、空き家法の運用状況を毎年公表しています。

令和6年3月末時点の累計で、助言・指導が39,180件、勧告が3,589件、命令が456件。市区町村ごとの内訳まで確認できる細かさです。

命令とは、行政が所有者に「危険な状態を改善しなさい」と正式に命じることを指します。ここまでははっきり追える。

自然と次が気になります。命令を無視されたのは何件で、うち何件に過料が科されたのか。

「過料」の全国件数だけ、統計にない

ところが、国交省の集計に過料の項目はありません。

公表される分類は、助言・指導、勧告、命令、行政代執行、略式代執行、緊急代執行の6つ。

裁判所へ通知された件数も、過料が決まった件数も、独立したデータとしては見当たりません。

制度が使われていないわけではなく、過料が確定した自治体があることは報じられてきました。ただ、それが全国で年に数件なのか数十件なのか、公表統計からは読み取れないのが現状です。

命令より「取り壊し」が多い理由

興味深いのは、過料が見えない一方で代執行の数字ははっきり出ている点です。

行政代執行213件、略式代執行510件、緊急代執行5件、合わせて728件。

命令456件に対し、代執行728件。取り壊しのほうが多い。順序からすれば逆のはずです。

理由は入り口の違いにあります。

行政代執行は所有者が判明していて命令に従わない場合。

一方、件数の多い略式代執行は、所有者が誰か分からない空き家が対象です。

相手を特定できず命令を出せないため、命令に計上されないまま取り壊しだけが進みます。

つまりいま最も動いているのは、所有者不明の空き家への対応なのです。

事業者にとっての意味

この流れは、いくつかの業種に実務的な可能性を含みます。

公費による解体案件の増加。相続整理や財産管理人(持ち主に代わって財産を管理する人を裁判所に選任してもらう仕組み)の活用による士業の関与。放置地が代執行を経て市場に戻る不動産の商機。解体・再活用の資金需要を担う地域金融。事務や現場管理の受け皿となる警備・清掃・管理業。

問題の本質は空き家の存在そのものではなく、放置されて誰からも関心を持たれなくなることにあります。

今回の数字は、その「関心を持つ側」に事業者や行政が回り始めた兆しともいえます。

まずは自分の地域の代執行件数の推移を確認するところから始めるのがおすすめです。

空き家管理士協会は、空き家の可能性に挑戦します。

この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの空き家ビジネスnoteでも解説しています。

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