防災型二地域居住とは。空き家を災害時の生活拠点にする新しい考え方
二地域居住を「防災」から読み直す
あらためて言いますが二地域居住とは、都市部と地方など二つの地域に生活拠点を持つ暮らし方です。
これを移住や趣味の話としてではなく、「災害時に暮らせる第二の場所を確保しておく」という防災の視点で見ると、地方の空き家の役割が変わって見えてきます。
普段から通って風を通している家が、都市の暮らしが被災で止まったとき、家族が寝起きできる場所になる。
特別な別荘ではなく、普段使いしている少し遠い住まい、というイメージです。
ただ、考え方が面白くても、個人の努力だけでは広がりません。
所有者との交渉、留守中の管理、修繕費、地域との関係づくり。一人で抱えるには壁が多すぎます。
ここに、事業者が関わる余地があります。
一軒の家を支える「5者連携」
災害時に使える家を普段から保つには、複数の担い手が要ります。
整理すると、次の5パターンです。
- 二地域居住者:第二拠点を実際に使う人
- 空き家所有者:住まいを提供する人
- 自治体:物件・地域・支援制度をつなぐ立場
- 地域事業者:修繕、清掃、生活支援などを担う
- 空き家管理士:不在時の住宅の状態を維持する担い手
この5者が輪になって、はじめて一軒の家が「いつでも暮らせる状態」を保てます。
単なる不動産取引ではなく、暮らしを維持するネットワークをつくるイメージです。
事業者にとって重要なのは、この輪のどこに自分の本業が当てはまるかです。
建設・リフォームなら修繕、警備なら防犯と災害後確認、士業なら所有者との権利関係の整理や契約設計、介護・福祉なら利用者の生活支援。
既存の顧客基盤とスキルを、新しい文脈で使い直せる可能性があります。
「防災拠点として使える空き家」という新しい棚
いまも多くの自治体に「空き家バンク」があります。
売りたい・貸したい物件を紹介する仕組みです。
これを一歩進めて、ハザード情報(浸水や土砂災害などの危険度を示した地図情報)と照らし合わせ、「災害時に使えそうな家」を新しいカテゴリーとして整理できないか、という発想があります。
売る・貸すの隣に、「防災拠点として使える空き家」という棚をもう一つつくる。
ここは自治体の政策余地であると同時に、物件の目利きや状態管理を担う民間事業者との連携が生まれやすい領域でもあります。
いまの支援に空いている「維持」の穴
ここが事業者に一番関係する部分です。
いまの空き家支援は、改修・解体・移住・売買に向きがちです。
言い換えると、「手放す」か「作り替える」ときには補助の対象になりやすい。一方で、「そのまま使い続けられる状態を保つ」ことには、支援が届きにくいのが実情です。
災害時に使える家であるためには、平時の維持こそが欠かせません。
定期巡回、通風・通水、台風後の点検、雨漏りの確認、庭木の管理、設備の確認。
この地味な積み重ねが、家を「いざ住める状態」に保ちます。
制度がまだ十分に手当てしていないということは、裏を返せば、そこに新しい需要が生まれる余地があるということでもあります。
空き家管理を「防災インフラの維持管理」として捉え直すと、単発の工事や取引ではなく、継続的な業務として設計しやすくなります。
事業者が今から準備できること
大がかりな制度を待つ必要はありません。できることから始められます。
まず、自社の業務のうち「維持・状態管理」に関わる部分を切り出して、継続メニューとして整理してみる。
次に、地域の自治体が空き家や二地域居住、防災でどんな取り組みを進めているかを把握しておく。
そして、単独ではなく、他業種と組んだときにどんな座組みが描けるかを考えておく。
災害の多い国であり、同時に空き家を多く抱える国でもある日本で、この二つを別々の問題にしない。
全国に「暮らせる場所」を分散して持っておく。
その入口は、案外「維持に手当てをする」という小さな一歩なのかもしれません。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。
















