隠れ空き家とは? 空家法で対象になりにくい留守宅と長屋の実情
「隠れ空き家」とは何か
「隠れ空き家」は、法律上の正式な分類ではありません。法律上は空き家として扱われにくいものの、実際には人が長く住んでおらず、管理が必要になっている住宅を指す呼び名です。
代表的なケースは、次の3つです。
- 入院や施設入所で、住む人がいなくなった「留守宅」
- 年に数回程度しか使われていない住宅
- 長屋の一部の住戸だけが空いている住宅
空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)は、ざっくりいうと、管理されていない空き家に自治体が対応するための法律です。
国の指針では、「おおむね年間を通して使用実績がないこと」がひとつの目安とされています。ただし、年に1回使えば必ず対象外になるという単純な線引きではなく、最終的には自治体が個別に判断するのが一般的です。
当協会では、こうした状態を、空き家予備軍が空き家になるまでの「抜け落ちた期間」と捉えています。法律の網からも、介護保険のサービスからも外れやすいため、いわば制度と制度をつなぐ「必要な一部が抜け落ちている」状態です。
長屋に立ちはだかる「制度」と「構造」の二重の壁
制度の壁
空家法は、建物1棟を単位に判断する考え方をとっています。
長屋は複数の住戸でひとつの建物です。そのため、ほかの住戸に居住者がいれば、建物全体としては「使われている」と見なされやすくなります。空いている住戸だけを個別に空き家として扱うのは、現行の仕組みでは難しいとされています。
構造の壁
長屋は、屋根も外壁も隣の住戸とつながっています。仮に制度が変わり、空き住戸を個別に認定できるようになっても、その住戸だけを解体するのは容易ではありません。
解体すれば隣家の壁がむき出しになり、補強工事が欠かせません。さらに、費用負担や隣接所有者との合意形成という課題も残ります。
放置は隣家にも影響する
老朽化が進むと、雨漏りや外壁の落下、建物の傾きが隣の住戸の安全を脅かすおそれがあります。居住者が不安から転居すれば、次の空き住戸が生まれる可能性もあります。長屋の空き家は、一戸だけの問題で終わらないのが特徴です。
団塊の世代の高齢化と、増えていく留守宅
団塊の世代は、すべて75歳以上になりました。今後は入院や施設入所をきっかけに、使われなくなる住宅が増えていくと見込まれます。
留守宅は、家具や家財がそのまま残っています。家族にとっては「いつか帰ってくる家」なので、空き家としての管理が後回しになりやすい傾向があります。
当協会が行った200人を対象とするWebアンケートでは、施設入所中の自宅の困りごととして、次の項目が上位に挙がりました。
- 雑草・庭木
- 遠方で見に行けない
- 郵便物
- 近隣からの苦情
また、34.5%が「誰も対応していない」と回答しています。
事業者にとっての意味
隠れ空き家の問題は、行政だけでも、所有者だけでも動かしにくい領域です。そのぶん、関連する事業者が関われる余地は大きいと考えられます。
- 介護・福祉事業者:施設入所や長期入院が決まった段階で、家族に住宅管理の相談先を伝えられれば、留守宅の放置を早い段階で防げる可能性があります。
- 建設・リフォーム業:長屋の安全調査や補強、切り離し工事は専門性の高い分野です。将来、支援制度が整えば、需要が広がることも考えられます。
- 不動産業・士業:留守宅はいずれ相続や売却の局面を迎えます。早い段階から関係をつくっておくことが、その後の円滑な相談につながります。
当協会では、施設入所や長期入院の段階から始める予防的な留守宅管理、つまり「介護と留守宅管理の連携」を進めています。長屋の空き住戸の個別認定や、一棟単位での補強支援については、今後の議論が求められる課題だと考えています。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。

















