北海道の空き家45万戸「管理限界」をビジネスに変える視点
北海道の空き家は約45万戸。自治体から「管理限界」の声も出ています。
けれど問題は“数”より放置。
段階的に関わる仕組みと「管理」をサービス化すれば、新しい市場と仕事が生まれます。
「空き家が増えすぎて、もう手に負えない」。
そんなニュースを見ると、たしかに気が重くなります。
特に雪国は、積雪・凍結・火災など、放置のダメージが早い。
とはいえ、ここで立ち止まりたいのは「本当に限界なのか?」という点です。
空き家は“存在”が悪いのではなく、“放置”が危険を増やします。
ならば解決のカギは、行政だけで抱えない設計と、民間が入りやすい「管理の市場化」。この記事では、北海道の事例を入口に、空き家管理を事業として成立させる考え方と、参入の勝ち筋を整理します。
空き家の課題は「数」より「放置」です。
放置を減らすには、いきなり移住・購入ではなく段階的に関わる導線が効きます。
その導線を支える「管理」をサービス化できる事業者が、次の市場を取ります。
北海道の空き家は45万1,900戸、空き家率は15.6%。2018年から空き家数は7万2,100戸増とされています。
この規模になると、自治体の予算・人員だけで全件の状態把握や指導を回すのは現実的に難しくなり、「管理の手が回らない」という感覚が生まれやすいです。
さらに雪国は、雪下ろし不足による損傷、凍結による配管トラブルなど、放置のコストが短期間で跳ね上がります。
国も空き家対策を強化しており、空き家の発生抑制・活用促進・適切な管理や除却を進める方向で制度整備が続いています。
北海道も法改正を踏まえた方針を示しています。
つまり今は、「行政の限界」を嘆くより、民間が担える領域を設計し直すタイミングです。
ビジネス機会
1)放置を減らすサブスク市場:管理を定額サービスにできる
空き家管理は一回きりの工事より、継続課金と相性がいい領域です。
例:月1回巡回+換気+通水+簡易清掃+写真レポート。雪国なら「冬季水抜き」「雪下ろし連携」など季節メニューを足せます。
2)「段階的な関わり」を商品化:移住・購入の前に“関係”をつくる
空き家バンクは有効ですが、“いきなり住む”前提だとハードルが高い。そこで、
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夏だけ使う「シーズン利用」
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年数回滞在する「二拠点」
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将来の移住候補としての「お試し管理+見守り」
のように、所有や移住の前段にサービスを置くと、成約率もトラブル率も改善しやすい。
3)異業種が参入しやすい:既存の強みを“空き家向けに転用”できる
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建設・設備:点検+小修繕+凍結対策をパッケージ化
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警備:巡回・センサー・鍵管理(不法侵入抑止)
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士業:相続・名義・権利関係の整理と管理契約をセット化
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介護:実家の見守りニーズと接点が強い
「全部できる会社」より、「得意領域を標準メニューに落とす会社」が強いです。
落とし穴(失敗しやすい点を3つ)
1)勝手に入る・勝手に直す問題(権限と合意の落とし穴)
善意でも、許可なく室内作業や修繕をすると揉めます。
回避策: 管理委任契約・緊急時対応の範囲・鍵の取り扱い・写真報告の同意を最初に文書化。
2)現場が回らない(メニュー過多・属人化)
「あれもこれも」で作業が膨らむと赤字化します。
回避策: 点検チェックリストと作業範囲を固定。オプションは別料金にし、レポート形式をテンプレ化。
3)季節要因で利益がブレる(雪国は特に)
冬に案件が集中し、人が足りなくなる。
回避策: 除雪・設備・外注先と事前に連携し、冬季は“予約枠”販売に。事故リスクに備えた保険・安全手順も必須。
今日できる次の一歩
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対象を決める:地域×空き家タイプ(戸建・別荘・相続直後など)を絞る
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基本メニューを3本だけ作る:巡回・冬季対応・小修繕手配(紹介)
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SOPを整備:チェック項目、写真枚数、報告頻度、緊急連絡フロー
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レポートの型を作る:写真+一言所見+次回提案(紙でもPDFでもOK)
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10件から始める:まずは運用負荷と原価を“見える化”し、単価と工数を調整
協会からの提案
空き家管理は、結局「現場品質」が信頼をつくります。
そこで当協会では、管理業務を標準化するための学び(基礎知識・点検の考え方・報告の型など)や、地域で連携できる事業者ネットワークづくりを進めています。
「まずは情報収集したい」「自社の強みで参入できるか整理したい」という段階でも大丈夫です。現場の入口で迷わないよう、相談導線も用意しています。
FAQ
Q1. 資格がないと参入できませんか?
A. 参入自体は可能です。ただ、品質と説明責任が要なので、学びと手順づくりが近道です。
Q2. 価格はどう決めればいい?
A. 「1回の作業時間×頻度+移動+報告工数」で原価を出し、基本は定額、追加はオプション化が安全です。
Q3. 雪国対応のポイントは?
A. 冬季の作業が読めないので、予約枠・外注連携・緊急対応範囲の明確化が重要です。
Q4. 空き家バンクと競合しますか?
A. 競合というより補完です。住む前の管理と関係づくりが、成約の下支えになります。
Q5. 火災や事故が心配です。
A. 施錠・可燃物管理・点検記録・保険など、リスク管理の型を先に作るのが基本です。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」で詳しく解説しています。
















