「関係人口」が鍵になる。空き家再生を動かす「中間の立ち位置」
空き家ビジネスに挑戦しようとすると、つい「良い物件を見つけて、リノベして、資金を組んで…」と正しそうな順番で進めたくなります。
でも現場では、その順番が遠回りになることも少なくありません。
結論から言うと、最初にやるべきは「建物」より「人」。地域の人の話を聞き、必要とされていることをつかみ、つながりをつくる。
そこからはじめる方が、結果的に事業が続きやすくなります。
空き家再生、最初に詰まるのは順番
空き家を使って事業をつくろうとすると、多くの人が「物件→リノベ→資金→集客」の順で考えます。
もちろん大事な要素です。
ただ、この順番で進めると「形はできたのに、地域に根づかない」という壁に当たりやすいんです。
理由はシンプルで、建物を整えるほど引き返しにくくなるからです。
後から「地域が求めていない」「協力者がいない」「紹介が回らない」と分かっても、投資した分だけ撤退判断が遅れます。
「旅する大工」の事例が教えてくれる視点
今回紹介したいのは、「旅する大工」として活動する伊藤智寿さんの取り組み。
和歌山県海南市の冷水浦という集落で空き家再生に取り組み、スピードよりにぎわいづくりを大切にしている、とされています。
ポイントは、建物を直すこと以上に「人とのつながり」を先に置いていること。
空き家活用って、結局誰が関わるかで未来が変わります。
よくある失敗パターンは「箱だけ作って終わり」
空き家活用の失敗談で多いのは、たとえば…
・おしゃれなカフェを作ったのに来ない
・民泊にしたがリピーターがつかない
・地域と摩擦が起きて撤退した
こうしたケースは、建物の良し悪し以前に「関係性の設計」が弱かった可能性があります。
地域に入るのは確かにハードルが高い。
知らない土地で、知らない人と関係をつくるのは不安です。
でも、そこを丁寧に越えた人が“まちを動かす側”になるのも事実です。
「関係人口」という中間の立ち位置が効く
伊藤さんの「旅する」という言葉には、定住者でも完全な外部者でもない“中間”のニュアンスがあります。
一般に「関係人口」と呼ばれる立ち位置にも近い考え方です。
この中間ポジションは、空き家再生で強みになり得ます。
地元の人は、近すぎる相手には言いにくいことがある。一方で、通りすがりには本音を出しにくい。
その間に立てる人がいると、対話の回路が生まれます。
参入者が最初から“主役”になろうとしない。まずは“聞き役”として関係を耕す。これが、結果的に事業の基礎体力になります。
空き家は「建物」ではなく「関係性」の問題
ぼくの整理では、空き家問題は建物そのものより「人と人」「人と場所」の関係が途切れた結果として表に出てきます。
だから再生も、建物を直すだけでは足りず、関係性を作り直す必要がある。
そこで関係性の再編集が進むと、空き家は単なる不動産から「人が集まる理由」へ変わります。
そこで初めて、笑い声や小さな賑わいが生まれ、地域の側も「また活気が戻ってきた」と感じられる状態に近づくはずです。
空き家ビジネスの勝ち筋は「まず聞く」から始まる
では、参入検討者が最初の一手として何をすべきか。
答えはシンプルです。
地域の人の話を、ひたすら聞く。具体的には、次の3つを聞きにいくイメージです。
・この地域はどんな場所だったのか
・何が失われて、何が残っているのか
・どんな未来を望んでいるのか
その上で、物件調査や資金計画を後から重ねる。
もちろん事業なので数字も大切ですが、順番を変えるだけで成功確率は上がりやすいんです。
最初は遠回りに見えても、結局それが近道になることが多い。
この視点は、空き家活用に限らず地域ビジネス全般に効くんです。
協会として、参入者に提供できる価値
空き家ビジネスは、不動産・建築だけの世界ではありません。
警備、介護、士業、清掃、造園、ITなど、異業種の強みがそのまま活きる領域です。
だからこそ、参入時は「現場の作法」と「つながり」が重要になります。
協会としては、次の支援が効くと考えています。
・学びの整備:現場で起きがちな失敗パターンや、地域との関係構築の基本を研修で体系化
・全国ネットワーク:地域で活動する実務者同士が、事例と紹介を回せる土台
・相談導線:参入前の壁打ち(事業仮説・役割分担・連携先の見立て)を早めに行える窓口
空き家活用は「建物よりも人」。
この原則を、事業設計に落とし込める人が増えるほど、地域側の選択肢も増えていきます。
空き家ビジネスで大切なのは、派手な改修でも、SNS映えでもなく、関係性づくりです。
最初に地域の声を聞き、必要とされる形を探る。
その土台ができてから、物件・資金・運営がつながっていきます。
参入を考えている方ほど、ぜひ「建物よりも人」という視点で、最初の一歩を組み立ててみてください。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの空き家ビジネスnoteで詳しく解説しています。
















