毎年90万人超が自然減する日本で、空き家ビジネスに必要な発想転換

空き家対策というと、これまでは「移住してもらう」「売る」「貸す」「解体する」といった選択肢が中心でした。

もちろん、それらは今でも大切です。

ただ、人口そのものが減っていく時代に、「誰かに住んでもらえば解決する」という前提だけで考えるのは、少し苦しくなってきています。

2024年の日本では、出生数が約68.6万人、死亡数が約160.5万人となり、自然増減数は約91.9万人の減少となりました。

つまり、住む人の数そのものが大きく減っているのです。

だからこそ、これからの空き家ビジネスには「住まい」だけでなく、「地域に必要な機能を入れる器」として空き家を見る視点が必要になります。

移住促進だけでは、空き家問題を解ききれない時代へ

これまで地方創生の現場では、「移住促進」が大きな柱のひとつでした。

都市部から地方へ人が移り住み、空き家に入居してくれれば、地域にとっても建物にとってもプラスです。これは間違いありません。

ただし、人口減少が進むこれからの日本では、移住促進だけで空き家問題全体を解決するのは、かなり難しくなってきています。

たとえば、ある自治体に移住者が1人増えたとしても、別の地域から1人減っているだけかもしれません。日本全体で見れば、空き家の総量が大きく減るとは限らないのです。

これは少し厳しい言い方をすれば、「椅子取りゲーム」のような状態です。椅子、つまり空き家は増えている。一方で、座る人、つまり住む人は減っている。
この構造を見ないまま、「移住者を増やせば空き家が解決する」と考えると、事業設計も地域施策も行き詰まりやすくなります。

これから重要になるのは「定住人口」だけでなく「利用人口」

利用人口とは何か

これからの空き家ビジネスで重要になるのが、「定住人口」から「利用人口」への発想転換です。

定住人口とは、その地域に住民票を置き、日常的に暮らしている人のことです。
一方で、利用人口とは、住民票を移さなくても、その地域に関わり、空き家や地域資源を使う人たちのことです。

たとえば、次のような使い方が考えられます。

  • 週末だけ使うサブ拠点
  • 都市部企業のワーケーション拠点
  • 企業研修や合宿の場所
  • 介護家族の一時滞在拠点
  • 学生や研究者のフィールドワーク拠点
  • 地域活動やNPOの拠点
  • 農業や地場産業を支える滞在場所
  • 防災備蓄や一時避難の拠点

つまり、「誰かが一生住む家」だけでなく、「誰かが定期的に使う場所」として空き家を考えるということです。

国の制度も二地域居住を後押ししている

この流れは、国の政策とも重なっています。

国土交通省は、二地域居住の促進を通じて地方への人の流れを創出・拡大することを目的に、関連する法改正を進めてきました。2024年には、二地域居住の促進に向けた改正法案が閣議決定され、地域での受け入れ体制づくりや支援法人の仕組みが位置づけられています。

また、国交省の資料では、二地域居住の促進は単に「住む場所を二つ持つ」ことだけが目的ではなく、広域的な人の往来を通じて地域活性化を図るものと整理されています。

これは、空き家ビジネスにとって大きなヒントです。

空き家を「移住者向け住宅」としてだけ見るのではなく、二地域居住、仕事、福祉、教育、防災、地域活動などを支える拠点として見る。
この視点を持つことで、空き家の出口はかなり広がります。

空き家は「住宅」だけでなく「地域機能の器」になる

空き家問題が難しいのは、建物の状態だけが問題ではないからです。

所有者には、さまざまな事情があります。

「売りたくない」
「貸すのは不安」
「先祖から引き継いだ家を手放すのは気が重い」
「何から始めればいいのかわからない」

こうした気持ちを無視して、「売りましょう」「貸しましょう」と迫っても、なかなか話は進みません。

しかし、「一生住む人を探す」のではなく、「地域に必要な使い方を一緒に考える」という入り口なら、所有者の心理的なハードルが下がる場合があります。

たとえば、空き家を小さな仕事場にする。
職人や個人事業主の作業場にする。
地域食堂や子ども食堂の場所にする。
都市部企業のサテライト拠点にする。
介護や看病のために帰省する家族の短期滞在場所にする。

これらは、必ずしも「住居」としてフル活用するわけではありません。
しかし、空き家が地域の中で役割を持つという意味では、十分に価値があります。

空き家ビジネスに参入する事業者にとっては、ここに新しい提案余地があります。
不動産業なら契約や活用提案。建設業なら改修や安全確認。士業なら相続・権利関係の整理。介護・福祉事業者なら家族支援や地域拠点化。警備・管理業なら巡回や維持管理。

空き家は、異業種が連携しやすい市場でもあるのです。

空き家ビジネス参入者が今から準備したいこと

住宅以外の活用事例を集める

まず大切なのは、「空き家=住む場所」という固定観念を少し外すことです。

自分の地域や業界で、空き家が住宅以外に使われている事例を集めてみてください。
仕事場、交流拠点、福祉拠点、教育拠点、防災拠点など、使い方の幅を知ることで、提案の引き出しが増えます。

自治体や空き家バンクとの接点を持つ

空き家活用は、民間事業者だけで完結しにくい分野です。
自治体、空き家バンク、地域団体、士業、不動産会社、建設会社などとの接点があるほど、事業化の可能性は広がります。

特に二地域居住や地域拠点化は、地域の方針や制度と連動することが多いため、自治体の動きを定期的に確認しておくことが重要です。

所有者との対話の入り口を整える

空き家ビジネスで見落とされがちなのが、所有者の心理です。

所有者は、必ずしも「収益化したい」と思っているわけではありません。
むしろ、「面倒なことにしたくない」「近所に迷惑をかけたくない」「家族と揉めたくない」という気持ちのほうが強いケースもあります。

だからこそ、いきなり活用提案をするのではなく、まずは管理状況の確認、維持管理、近隣への配慮、今後の方針整理といった“入口”を用意することが大切です。

空き家管理は、その入口として非常に相性の良いサービスです。
定期的に建物の状態を確認し、所有者と対話しながら、将来的な売却・賃貸・活用・解体・管理継続につなげていくことができます。

空き家管理士協会が考える、これからの空き家ビジネス

これからの空き家ビジネスは、単に「空き家を見つけて活用する」だけでは成り立ちにくくなります。

人口減少、所有者の高齢化、相続、管理不全、地域の担い手不足。
こうした複数の課題を見ながら、現実的な提案を組み立てる力が必要です。

その意味で、空き家管理はビジネスの入口であり、地域課題解決の入口でもあります。

空き家をすぐに売る、貸す、壊すだけでなく、まず状態を把握する。
所有者とつながる。
地域の関係者と連携する。
そのうえで、管理、活用、流通、改修、福祉、防災、二地域居住などへ展開していく。

こうした流れをつくれる事業者は、これからの空き家市場で重要な役割を担う可能性があります。

空き家管理士協会では、空き家ビジネスに関心のある方、異業種から参入を検討している方、地域で空き家対策に関わりたい方に向けて、資格・研修・情報提供・ネットワークづくりを進めています。

「空き家をどう活用するか」の前に、まず「空き家とどう向き合うか」。
その基本を整えることが、人口減少時代の空き家ビジネスの第一歩になると考えています。

空き家管理士協会は、空き家の可能性に挑戦します。

この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの空き家ビジネスnoteでも解説しています。

クレジットカード
2019年3月より、一般社団法人空き家管理士協会の皆さんの年間登録料のクレジットカード支払いが可能となりました。利用できるクレジットカードはVisa,Master,JCB,Amex,Dinersです。ぜひご利用ください。
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【登録第5722840号】
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