【2026年版】相続登記義務化×国庫帰属制度。2024年以降の土地制度の変化を現場目線でまとめる

相続土地国庫帰属制度のしくみをざっくり押さえる

最近注目の「相続土地国庫帰属制度」とは、相続または相続人への遺贈によって取得した土地を、一定の条件のもとで国に引き取ってもらえる制度です。2023年4月27日に施行されました。

対象は相続・遺贈で取得した土地に限られます。自分で購入した土地は対象外です。

申請には審査手数料が必要で、承認されると10年分の管理費に相当する負担金を国に納める必要があります。

最大のポイントは、「いらない土地を何でも引き取ってくれる制度ではない」という点です。

国が管理できる状態に整えられた土地のみが受け入れられます。

この前提を理解しておくことが、制度を正確に説明するうえで欠かせません。

制度が生まれた背景。所有者不明土地という社会問題

この制度が生まれた背景には、日本が直面する「所有者不明土地問題」があります。

高齢化が進み、相続件数が増えても、地方の土地需要は低下し続けています。

登記されないまま世代が替わり、いつの間にか「誰の土地か分からない」状態になる土地が全国で増えています。

国土交通省の調査では、その面積が九州全体を超えるという試算も出ています。

所有者不明土地は、公共事業・防災工事・まちづくりの支障になります。

土地の整備をしようとしても、所有者を探すだけで何年もかかるケースが現実に起きています。

相続登記義務化との関係

こうした問題への対策として、国は2つの制度を整えました。

2024年4月に施行された「相続登記の義務化」は「誰が所有者かを明らかにする制度」です。

相続から3年以内に登記しなければ、過料が科される可能性があります。

相続土地国庫帰属制度はその片方「どうしても持ち続けられない土地を手放す道」として機能します。

「登記を義務化しつつ、出口も用意する」という国の制度設計として、2つはセットで理解しておくことが重要です。

制度のハードルを正確に理解する

「国に返せる」と聞くと簡単そうに思えますが、実務上はかなりのハードルがあります。

関与する事業者・専門家として、所有者に正確に伝えられるよう整理しておきましょう。

建物が残っている土地は原則として申請できません。

更地にしてから申請する必要があり、解体費用の確保が先決です。

境界が不明確な土地は却下されやすく、境界確定のための測量と隣接地所有者との合意が必要になります。

担保権・使用権が残っている土地、崖地・土壌汚染・埋設物がある土地も対象外になりやすいです。

つまりこの制度は、「整えられた土地を国に渡す」しくみです。

整備のプロセスそのものに、専門家の出番があります。

最新データが示す現実

法務省の統計(令和8年5月31日現在)によると、申請件数は累計5,545件、帰属件数は2,762件です。

承認率は約50%ですが、法務局への事前相談件数が2025年5月末時点で14,000件を超えていたことを踏まえると、「土地を手放したいというニーズはもっとずっと多い」ことが分かります。

申請まで進む人は、事前相談の段階で一定のハードルを越えてきた方たちです。

申請後に途中で取り下げるケースも出ており、「境界問題が発覚した」「解体が先に必要とわかった」などが理由として挙げられています。

空き家のある土地では、すぐに使えない制度

空き家管理に関わる事業者として特に意識しておきたいのが、この点です。

相続土地国庫帰属制度は「土地」の制度ですが、現場で問題になるのはほぼ「建物付きの土地」です。

実家が建ったまま、家財が残ったまま、境界も分からない、そういう状態では、制度利用以前に解決すべきことが山積みです。

「制度があっても、すぐには使えない出口」。これが現場の実態です。

逆に言えば、制度を使えるところまで整えていく過程で、解体・測量・家財整理・権利整理・管理代行など、複数の専門領域の仕事が発生します。

事業者が活躍できる場面「整備の過程」に需要がある

この制度をきっかけに動き始めるオーナーが増えるということは、その「整備の過程」を支援する需要が確実に生まれるということでもあります。

解体業者・リフォーム業者は、建物の撤去や更地化の相談窓口になります。

土地家屋調査士・測量業者は、境界確定の対応が増える可能性があります。

司法書士・行政書士は、相続登記・権利整理・制度申請のサポートを求められる場面が増えます。

空き家管理事業者は、所有者が「制度を使えるかどうかを判断するための現状把握」の入口になれます。

そして何より、相続が発生してから動き出すのでは遅いケースが多いことを、実務者は知っています。

親が施設に入って実家が無人になった段階、草が伸び始めた段階。

その時点から所有者に関わり、記録・管理・整理を支援できる体制を持つことが、これからの差別化につながります。

土地神話の終わりとともに、「相続前からの管理支援」という新しい市場が動き始めています。

空き家管理士協会は、空き家の可能性に挑戦します。

この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの空き家ビジネスnoteでも解説しています。

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