2030年・2040年・2050年、住宅管理の需要はどう変わるか
空き家対策は「予防」の段階に入った
改正空家法で何が変わったか
2023年12月に施行された改正空家法では、「管理不全空家」という区分が設けられました。
ざっくりいうと、放っておくと倒壊などの危険がある「特定空家」になりそうな住宅のことです。
市区町村は、特定空家になる前の段階から指導や勧告ができるようになりました。
勧告を受けた場合、住宅用地特例の対象から外れる仕組みになっています。
住宅用地特例とは、住宅が建っている土地の固定資産税を軽くする特例のことです。運用の詳細は自治体によって異なるため、個別のケースは窓口での確認が必要です。
それでも残る「空き家になる前」の空白
管理不全空家の仕組みは、あくまで空き家になってからの早期対応です。
家庭の側の備えはどうか。国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査では、相続で空き家を取得した世帯のうち、相続前に何らかの対策をしていたのは23.0%でした。
さらに、対策の中身で最も多いのは親との話し合いで、住宅そのものの点検や管理の段取りは、ほとんど選ばれていません。
所有者が怠けているというより、「まだ早い」と思っているうちに時間が過ぎてしまう、というのが現場の実感に近いところです。
予防を形にする4つの仕組み(協会の提案)
以下は協会として検討・提案している構想で、国や自治体の制度として決まったものではありません。
家検:暮らしの節目で受ける住宅点検
人には健康診断、車には車検がありますが、住宅は所有者が依頼しない限り誰も確認に来ません。そこで協会では、住宅点検の構想「家検(いえけん)」を検討しています。
特徴は、築年数ではなく暮らしの節目で受けることです。
たとえば、親が75歳を迎えたとき、施設入居や長期入院が決まったとき、相続が起きたとき。
屋根や雨どい、外壁、水まわり、床下などを確認し、結果を「家のカルテ」として家族と共有します。売買時に行うホームインスペクションが一時点の診断だとすれば、家検は住み続けるあいだの継続記録に近い位置づけです。
介護と留守宅管理の連携
介護が始まるとき、ケアマネジャーや地域包括支援センターから、留守宅管理の相談先へ情報が届く流れを想定しています。
介護保険の給付対象にすることを直ちに求めるのではなく、まずは情報をつなぐ連携からの提案です。
実家管理費控除(仮称)
遠方に住む子どもが親の家の管理費を負担している場合に、一定の条件を満たす適正管理の費用を税制で後押しできないか、という提案です。控除の対象や上限、管理実績の証明方法など、検証すべき課題は多く残っています。
地域で家を見守る体制
すぐに売れない、貸せない住宅については、地元の事業者が連携して見守り、修繕、賃貸、解体、土地の行き先までを一軒ずつ判断していく体制を描いています。
事業者にとって何が変わるか
「見る仕事」に需要が生まれる
予防型の住宅管理が広がれば、住宅を活用する仕事に加えて、住宅を継続的に確認する仕事の需要が増えていく可能性があります。業種ごとの接点は、たとえば次のようなものです。
- 建築・リフォーム:家検の点検、記録にもとづく小規模修繕
- 不動産:点検記録を踏まえた売却・賃貸の判断支援
- 士業:相続前の財産管理や家族間の取り決めの相談
- 介護・福祉:住宅のことを相談できる窓口への橋渡し
- 警備・清掃:留守宅の巡回や見回りの実務
参入前に押さえたいこと
介護や相続の場面に関わる仕事では、本人の同意、契約の権限、個人情報の扱いに十分な配慮が欠かせません。
ケアマネジャーには公正・中立の立場があるため、特定事業者の売り込みと受け取られるような関わり方は信頼を損ねます。
また、税制や連携の仕組みはまだ提案段階であり、制度化を前提にした事業計画は慎重に考える必要があります。
2030年から2050年をどう見るか
2030年には団塊の世代が80代前半になり、介護と住宅管理が同時に始まる家庭が増えていくと見られます。2040年には90代に入り、相続の件数がさらに増える時期を迎えます。2050年には団塊ジュニアが70代後半となり、次の世代の実家の問題が始まります。
人口減少の流れはすぐには変えられませんが、住宅をどんな状態で次の世代に渡せるかは、地域で管理を担う人の層の厚さに左右されるはずです。
協会では、空き家管理を見守りサービスにとどめず、地域の暮らしを支えるインフラの一つにしていきたいと考えています。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。
















