相続人が全員放棄した家はどうなる?相続財産清算人と自治体の役割
相続放棄が絡む空き家が、片付けの現場に増えている
相続放棄は、借金だけを手放す制度ではありません。預貯金や不動産と一緒に、家の中のタンスや冷蔵庫、衣類なども「受け取らない」ことになります。
ところが、受け取る人がいなくなっても、モノは家に残ります。
地方で一人暮らしをしていた親が亡くなり、都市部に住む子どもが放棄を選ぶ。こうした流れは、今後さらに増えていくと見られています。
片付けの依頼が入ったとき、その家が「放棄された家」かどうかで、事業者がとるべき対応は大きく変わる可能性があります。
2023年の民法改正で、放棄した人の義務が整理された
2023年4月に施行された改正民法では、放棄した人がどこまで家を守る必要があるのかが整理されました(民法940条)。
ざっくりいうと、放棄したときに財産を実際に手元で管理していた人は、次の相続人や清算人に引き渡すまで、自分のものと同じくらいの注意で保存しておく必要がある、というルールです。
ポイントは「現に占有」という言葉です。
遠方に住む子と、同居していた子
何年も県外で暮らしていた子どもは、一般的には実家を占有していたとは言いにくく、保存の義務は生じないと考えられています。一方、最後まで親と同居し、鍵を持ち、家財を目の前にしていた子どもは、放棄後も一定の役回りが残る可能性があります。
依頼者がどちらの立場なのかで、話の進め方が変わってきます。
「よかれと思って」の処分が問題になることも
放棄の前に家財を売ったり処分したりすると、相続を認めたものとみなされる場合があります(民法921条、ざっくりいえば「財産に手をつけたら相続したことになる」というルール)。放棄後も、財産を隠したり私的に使ったりすれば、同様の扱いになる可能性があります。
依頼者が善意で「全部片付けてほしい」と言っても、それが本人にとって不利益になるおそれがあるわけです。
腐った食品の処分や雨漏りの応急処置のような、家を傷ませないための最低限の対応は、一般には問題になりにくいとされています。ただ、貴金属や車、まとまった家財の一括処分などは、事前に専門家の確認をはさむのが安全です。
全員が放棄したあとに残る、費用の問題
子どもが全員放棄すると、相続の権利は亡くなった方の親、さらに兄弟姉妹やその子どもへと移っていきます。そこまで全員が放棄して、ようやく「相続人がいない」状態になります。
その先には、家庭裁判所が選ぶ「相続財産清算人」(持ち主のいない財産を整理する役の人)という仕組みがあります。ただ、申立てがなければ動きませんし、財産が乏しい場合は申立人が予納金を求められることがあります。自治体の事例では、100万円ほどを見込んだケースも見られます。
2023年の空家法改正で、市町村長が選任を請求できる道も広がりました。
とはいえ、その費用は公費です。危険度の高い家から順番に、時間をかけて進むのが現実だと思います。
この記事の背景や現場目線の補足は、ぼくの「空き家ビジネスnote」でも解説しています。
















